2006-12-27 (vol. 134) |
─ 舞踏家・竹之内淳志さん ロングインタビュー |
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【インタビュー】 日本の前衛舞踊、東ヨーロッパで活躍 舞踏家 竹之内 淳志さん |
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『舞踏(ぶとう)』というダンスのジャンルがある。1960年代に土方巽(※)によって確立されたもので80年代にはBUTOHとして世界で知られた日本発の前衛舞踊だ。2006
年7月にニュルンベルグ市のイベント「アジア・ナイト・マーケット」での公演のためにドイツを訪ねた舞踏家、竹之内淳志さんに話をきいた。同氏は欧州・東欧を中心に活躍している。(聞き手・構成 写真= 高松
平藏)
欧州での 舞踏の魅力
『大きな木があるところ、古い城、ベルリンの駅、チェコの駅、ベルリン地下鉄、アウシュビッツ、ポーランド、イングランドやギリシャの海岸など欧州、東欧が多いですね。その「場」を感じながら、「場」と踊るといったことをしてきました』 『世界中と向き合い、公演を行い、自分の作品を発表してみたかった。これが海外へ出る動機でしたね』 ■舞踏はすでに日本国外でもよく知られています。 『そうですね。演劇・ダンス分野で世界的に知られています。しかし実際に見たことのある人はそんなにいません』 『世界の人が舞踏に対して、なぜ可能性を感じ、そしてよく知られるようになったかというとダンスの考え方が違っていたんです』 『普通のダンスはおおまかにいえば、振り付けが外から来ている場合が多い。たとえば「これぐらいの角度に腕をあげる」といったように振付ける。インド舞踊にしてもひとつひとつの指のかたちには全部意味があるわけです。つまり、どういうかたちに沿って、踊りをつくっていくかという発想ですね』 ■では舞踏は? 『日本の踊りは身体の動きからいえば舞踏と近い傾向はあると思いますが、日本舞踊や仕舞にしても形があるところへ魂をいれていくような感じですね。クラッシック音楽でいえば、先に音符がきちんと読めて、それを完璧にできたあとに魂をいれるというのと似ています。ところが舞踏はその反対』 ■具体的にどのように踊りをつくっていくんですか 『かたちのないものを踊っていきます。たとえば「風になってください」「空気になってください」といった具合ですね。風、蒸気、煙など不定形なものをイメージしながら体を動かしていくことが多いです』 ■ずいぶん抽象的ですね 『はい。だから例えば、ダンサーが「煙」を踊ってもお客さんは何がなんだかわからない。じゃあ、一体この方法は何なのかというと、自分の体から発信されるものを探し出すという作業なんです』 『アクロバッティックなダンサーの場合、身体を二回転、三回転できるなどの技術をもっています。ところがお客さん側からみると、技術はたいしてうまくないダンサーでもなぜか魅力があるという場合がある。これは、技術よりも、ダンサー本人の身体から立ち現れているもが面白いわけですね。舞踏はそういうものを見つけたいわけです』 ■舞踏が欧州に与えたインパクトというのは何だと思いますか。 『言葉にならない自分の内側からうまれる動きを開放する、ということを、舞踏を通して欧州の人は得たのではないかという気がしています』 『普通、ダンスは体を鍛え上げ、そして規定していきます。しかし、決して肉体を開放するものではなかったと思う。もちろん、外から規定することによって最終的に開放するという方法もありますよ。たとえばタランテッラ(※)という民俗舞踊は同じステップを繰り返す。それによってダンサーたちがナチュラルハイになって精神的に浄化され、病気から開放される。それにしても動き自体を開放しているわけではない』
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■■インターローカルニュース■■ 発 行 : インターローカルジャーナル http://www.interlocal.org/ 発 行 人 : 高松平藏 発 行 日 : 不定期 Copyright(C) Interlocal Journal |
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