2006-12-27 (vol. 134)
─ 舞踏家・竹之内淳志さん インタビュー
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複数の国の若者と
ワークショップ


■同更生施設で複数の国の若者とワークショップをしたとか。
『2年前にドイツ、昨年の12月にはロシア、ウクライナ、リトアニアとの若者たちと一緒に共同で作品をつくるプロジェクトをしました。いずれも親がいなかったり、アルコール中毒など難しい状況の若者ばかりです』

■ドイツはポーランドの隣国で、経済的には恵まれた国です。
『ドイツの若者たちは世の中にすごく守られている感じがしましたね。ある意味わがまま』

『ポーランドの施設は元々独立系。だから自活しなければならないんです。冬でもハウスで石炭をたいて、花や野菜を育て、市場におろす。冬は厳しい国ですから、野菜の値段はいいのでしょう。今、ようやく国から補助金の類が多少来るようになった。だから少しはアートに対してもう少し時間が取れるようになったように思いますが、それでもいまだに花をつくらなければならない』

■ドイツの若者とは違う?
『方針としては常に一番いい状況を与えていく中で更生させていこうという考え方があるのでしょう。しかし、これだと更生ではなくて、飼いならされているという感じがしますね。何不自由ない暮らしを国が提供している。だからあなたもまじめにちゃんとやりなさい、というふうに見えます』

『食べるものにしても国に守られているからゆったりしている。だからポーランドの施設のように「これをしないと僕らは食べていけない」、という緊張感がない』

■ドイツは社会福祉的な面で充実していますからね。
『何不自由ないところから不自由な状況になると、「不自由じゃないか」とやはり言い始める。こんな不自由な生活だと、元に戻ってしまうというかもしれないというわけです。これでは社会更生ではないということで、常に彼らにはケースワーカーなり、ヘルパーがついていて、とても過保護な状態になっているのを見ました』

『ドイツの若者たちは愚痴をいいつつも、作品作りに参加してくれましたが、本人たちが内に持っている力はポーランドの若者たちのほうが断然、強烈でしたね』

■社会福祉が充実しているがゆえの出来事ですね。
『もちろん、ドイツも面白い国ですよ。当たり前のことなんですが、国が守ってくれてもなお、しっかり働いている人はいる』

『ただポーランドは世の中でいわれる底辺の人が守られていないから、本当に自分が生きていかないと死んでしまうという危機感の中にいる。だからこそ逆に生命力がすごくあるのを感じるし、舞踏が求められているのだと思います』(了)


●竹之内 淳志(たけのうち あつし)さん
日本国外を中心に活動している舞踏家。みずからの舞踊を『じねん舞踏』と名づけている。西欧的な概念でいえば、自然(しぜん)とは人の管理下にある。それに対して自然(じねん)は人間も含む、天地・宇宙の森羅万象を示す。
1980年、舞踏グループ『北方舞踏派』に入門。舞踏の創始者土方巽に振付を受けたこともある。90年代半ばから後半にかけて日本各地の土地風土、あるいは人や音楽から感じたままを即興舞踏にする『じねん』ツアーを行う。99年ごろから日本国外で公演やワークショップを行う。1962年伊勢松坂生まれ。
竹之内さんのホームページ http://www.jinen-butoh.com/


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発  行  人 : 高松平藏 
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