インターローカル ニュース
Interlocal News 2006-12-27 (vol. 134)
─ 国旗、東欧の舞踏
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□□ 目次 □□
【ニュース】今年のドイツのキーワード『国旗』?

【連載】インターローカルジャーナリズム/『広報担当者』
【インタビュー】舞踏家・竹之内淳志さん 欧州・東欧・ニュルンベルグ

【編集後記】今年最後の配信です

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【ニュース】

今年のドイツのキーワードは『国旗』?
バイエルンのベスト報道写真、発表


バイエルン州のジャーナリストの組織『バイエルン・ジャーナリスト同盟』はこのほど、『バイエルン・プレスフォト 2006』にエアランゲンのカメラマン、カート・フックスさんの写真を選んだ。今月7日、ミュンヘンで受賞式を行った。また、2日付『エアランガー・ナハリヒテン』紙でも受賞写真が掲載された。

エアランがーナハリヒテン紙に掲載されたフックスさんの報道写真


選ばれた写真はワールドカップ期間中のもので、日本−クロアチア戦の試合会場にもなったニュルンベルグ市内で撮影されたもの。若いサッカーファンがドイツの国旗を手に、自動車のサンルーフから上半身を乗り出したところを撮影。背景にはこの時期、同市内のミュージアムで開催されていた展覧会、『What is German? (原語:Was ist deutsch?)』の大きなポスターが写っている。

今年はサッカーがきっかけで、ドイツでナショナリズムという言葉が踊った年だった。そもそもドイツはナショナリズムの強い国であるが、日本でもよく知られるように、教育の現場にもナチス時代の反省を持ち込んだ。その結果、戦後のナショナリズムは『反ドイツ』を内包する屈折したものになった。しかし、サッカーがきっかけとなって、ドイツのあちらこちらに黒、赤、金の三色旗が目についた。

カート・フックスさん
そんなドイツの事情を鑑(かんが)みると、フックスさんの写真が時代を切り取った報道写真であることがよくわかる。

ちなみにドイツ語協会が発表した『2006年の言葉』の一位にはワールドカップ関係のもので、10位には『schwarz-rot-geil!(黒−赤−イカすぜ!)』が選ばれている。これはドイツ国旗の三色旗にちなんだ言葉だ。

フックスさんはエアランゲン在住のカメラマン。ハイテク関係の取材が多く、エアランゲン市内の研究機関やレーザー関係の施設を撮影した写真集なども出している。(了)





【連載】
インターローカル・ジャーナリズムを考える(4)
広報担当者


ドイツのエアランゲンは10万人の街だ。そんな街にジャーナリストがけっこういるが、それにもまして多いのが広報担当者だ。中には博士号やMBAを取得している広報マンもいる。(つづきはこちら




【ロング・インタビュー】
ニュルンベルグのイベントに
出演した舞踏家 竹之内淳志さん


今年の夏、欧州・東欧を中心に活躍しているダンスアーティスト、竹之内淳志さんがニュルンベルグ市内でのイベントに出演するため、ドイツへやってきた。同氏は日本のオリジナル前衛舞踊として世界中で知られている『舞踏』のアーティストで、このほど記者の取材に応じた。同氏の活動を通じて、欧州・東欧で舞踏はどのような意味が位置づけがあるのかが見えてくる。

インタビューの本編はこちら
日本の前衛舞踊、東ヨーロッパで活躍
  (1)欧州での舞踏の魅力
  (2)自我を環境に同化させる
  (3)舞踏を現代に残したい
  (4)東欧、ポーランドでの舞踏
  (5)アルコール・薬物中毒者を対象にアート・テラピーも
  (6)複数の国の若者とワークショップ



■アジア・ナイト・マーケットでの舞踏
中国・シェンツェン(深●市)ヨーロッパ・オフィスの章毅平(Zhang Yiping)氏(左)とニュルンベルグ市『経済大臣』に相当するローランド・フレック博士(右から2番目)。開会式でテープカットを行った。
(●の部分は土へんに川)
今年7月、ニュルンベルグ市内で2日間にわたりに開催されたのが『アジア・ナイト・マーケット』というイベント。同イベントはアジア地域の料理や雑貨などが並び、仮設舞台では民族音楽やダンス、パフォーマンスが行われた。日本を含む15カ国以上の『アジア』が一同に会したかたちだ。

このイベントは都市の活性化と経済戦略の二つにポイントをおく。まず、会場のある同市南部は外国人居住者の多い地域で、同地区の観光地としてのポテンシャル向上と活性化が目的だ。次に近年、経済分野でニュルンベルグ地地方を『アジアの玄関』とも位置づけていることから『ニュルンベルグの中のアジア』『アジアの中のニュルンベルグ』という存在感を示すのが狙いだ。今回は昨年に引き続き2回目の開催。ちなみに同市内には中国・シェンツェン市(深●市)のヨーロッパオフィスがあり、テープカットには同オフィスの章毅平(Zhang Yiping)さんもかけつけた。

※(●の部分は土へんに川、日本では「深セン」と表記されることが多い)

今回、日本からはダンスアーティストの竹之内淳さんが出演した。同氏は日本のオリジナル前衛舞踊として知られる『舞踏(ぶとう)』のアーティスト。同イベントの目玉としてパフォーマンスを行ったほか、会場内を踊りながら練り歩いた。

■少年たちとのコラボレーション?
竹之内さんが会場内を練り歩こうとした時、こんな一幕もあった。
10人程度のトルコ人と思われる少年たちが立ち止まっていた竹之内さんを取りかこんだのだ。最初、『日本人か?』などと話しかけ、カンフーの物まねをしたり『コンニチハ』と日本語ではやしたてた。

竹之内さんは無言で彼らと向かいあったままだったが、おもむろに踊りだした。すると少年たちも一緒に同じように動き出した。やがてまわりには人も集まりだし、ちょっとしたコラボレーションのような様子になった。

おそらく、最初は興味本位で話しかけてきたのであろうが、最後は満足そうに『サヨナラ』と言いながら少年たちはたち去った。一種のコミュニケーションということになろうが、身体パフォーマンスが持つ力が存分に出たかたちだ。

また、会場内を練り歩く途中、尺八を演奏するドイツ人演奏家と即興でパフォーマンスが行われるといった一幕もあった。

容姿と言葉からいえばトルコ系と思われる少年たち。カンフーの真似をしながら、竹之内さんの前に立ちはだかる。同氏の奇異な姿に興味を持ったのか
おもむろに踊りはじめるとつられるように少年たちも踊りだした。


よく知られている舞踏
舞踏は世界的に知られている分野だが、それを感じさせることもあった。

たとえば竹之内さんの公演のあと、面会を求めて数人が訪ねてきた。また熱心に見入っている人々からは『芸術専門チャンネルのARTEで見たことがある』『これは舞踏ですね。知っていますよ。すばらしいです』といったような感想が聞かれた。

舞踏が世界で知られるのは80年代に入ってからだが、こうした感想を話してくれた人々は中年以上の年齢の人たちばかりだった。(了)

ドイツ人の尺八演奏家と即興コラボレーション






編集後記
今年最後の配信です


◆今年も残すところあとわずかとなりました。
来年もよろしくおねがいいたします。(高松 平藏)


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発  行  人 : 高松平藏 
発  行  日 : 不定期

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