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 第4回 広報担当者


ドイツのエアランゲンは10万人の街だ。そんな街にジャーナリストがけっこういるが、それにもまして多いのが広報担当者だ。中には博士号やMBAを取得している広報マンもいる。

熱心なプレス担当者
 ドイツにいると、多くのプレス担当者と接点ができてくる。そして彼らは一様に熱心だ。広報マンたちとのエピソードを少々紹介しよう。

 まず驚いたのはある大規模な文化フェスティバルで、ひとつの会場へ行った時だ。突然、元気な女性が話しかけてきたのだ。事前にオーガナイザーに取材のためにいくつかの会場を回ることは伝えてあったのだが、その女性はフェスティバルの会場の一部になっていた施設のプレス担当であった。

 彼女は積極的なプレス活動を行っていて、頼みもしないのに、著名な振付家とのインタビューを設定してくれたりもした。ドイツでの取材活動をはじめたばかりのころで、面食らった。

こんなこともあった。
ある技術系の研究所のパーティで一言二言話したプレス担当者がいて、後日また、偶然にも別のところで会った。矢継ぎ早にこちらの関心分野などを『取材』されてしまった。的確な広報を行うためだ。

行政、NPOや教会も
 自治体のプレスも熱心だ。ドイツで活動をはじめたころ、私が住むエアランゲン市のプレス担当者と知り合った。挨拶がわりに『またそのうち、市長のインタビューもさせてくださいね』と言ったところ、数日後に電話がかかってきた。『この日なら30分、時間がとれます』ときた。引越し荷物が家の中を占拠していてまだまだ本格的に執筆活動などできない時期である。事情を説明して丁重に断った。

 同市のプレス担当の責任者にいたっては、私の名前を、ドイツの人にとってはなじみのない外国人の名前を、いち早く覚えてくれた。逆にこちらが、なかなか責任者氏の名前を覚えられずおおいに恐縮したものだ。

 非営利法人が広報担当者をおいていることがある。一度接点ができると、プレスリリースをきちんと送ってくる。

 教会もそうだ。ある教会が運営する幼稚園で大掛かりなイベントがあり、広報担当者が熱心にプレスリリースを送付していた。うろ覚えなのだが、25、6のメディアやジャーナリストとコンタクトを持っているといっていたように思う。

質の高いプレスマン
 企業が戦略的に広報に力を入れているケースもある。いずれも私の知る範囲ではエンドユーザーに直接関係のない業態だ。こういう業態の場合、企業の信頼性や知名度を高めようと思うと必然的に出てくる戦術なのだろう。

 ある技術系のベンチャー企業はわざわざプレス担当を雇用している。そのせいか、一般の人が読むような新聞にまで写真付きで登場することがある。

 あるいは博士号をもっていたり、MBA(Master of Business Administration/経営学修士)を取得しているような人がプレス担当になっている。

 MBAといえば経営管理職へのパスポートといった向きがあるが、企業経営全体を分かった上でプレス活動を行っているといえる。MBA氏が働いているのはエアランゲンに本社をおく技術系の企業で、世界中に展開している。その業界ではよく知られた会社だ。『さすが』だと思えた。

公的言語の専門職
 前回も書いたが、広告が商品を売るための行為とすれば、広報とは組織の存在や考え方を公的な言葉で表現する行為である。これによって組織が社会的にどういう存在かを示すことができるわけだ。そう考えるとプレスマンは公的な言葉を操る専門職ということになろう。

 公的な言葉は新聞などで公開されることになるが、それゆえジャーナリズムの専門教育を受けた者が就くことが多いのだろう。逆にジャーナリストがプレス担当に『転職』するケースもけっこうある。

 ドイツ全体を見ると、人々は所属する企業よりも、職業別の意識が強い傾向があるのも特徴である。

 そのためこんなこともあった。
突然見知らぬ会社から取材をしてほしいという依頼の連絡が来たのだ。どこで私の名前を知ったのかと電話の主に尋ねると、以前取材させてもらった組織のプレス担当部署で働いていたとのこと。プレス担当者同士の横のネットワークを感じさせる出来事だった。プレスマンの転職は会社が変われどプレスマンなのだ。

 いずれにせよ広報という行為がジャーナリズムを担っているといえるし、それが地方都市においても盛んなのだ。地方紙があり、地元ジャーナリストがいて、広報マンもいる。地方にも役者は揃っている。(つづく)
(2006年12月27日 高松 平藏)
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発  行  人 : 高松平藏 
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