ドイツ・エアランゲン在住ジャーナリスト
高松平藏 のノート
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2007年7月19日



職場としての幼稚園(上)

それなりに仕事を経験すると、いろいろな組織の運営状態に目がいくことがある。子供たちが通う幼稚園をそんな視点で見て見たい。

※この記事はメールマガジン『ドイツ発 わが輩は主夫である』に執筆したもの です。

キンダー・センター
わが家の子供たちが通う幼稚園は日本でいうところの保育から学童保育までをカバーしている。だから名称も『キンダー・ガルテン(Kindergarten)』ではなく、『キンダー・センター(Kinderzentrum)』なのだ。

園内では4クラスあるが子供たちの年齢は混成だ。ドイツの小学校は4年生までなので、2歳ぐらいから10歳ぐらいまでの子供が同じクラスである。実際、長女と次女が同じ『カタツムリ組』にいる。それから年度ごとのクラス替えがない。長女などは今ではベテラン・カタツムリだ。

先生たちは2種類いる。日本の専門家の中ではどんな定訳がなされているのかわからないが、今回は便宜上、『保育士(Erzicher)』と『保育助手(Kinderpfleger)』としておこうか。

その名(翻訳)のとおり、保育士のほうが高い教育を経てきていて、文脈によっては『教育者』と翻訳されることもある。ドイツ語の話は読むのも面倒くさいであろうし、私のドイツ語そのものもあやしいので、ボロが出ないうちにやめておくが、とにかく幼稚園には2種類の資格の先生がいる。

さて、この幼稚園、市内でもけっこう評判が高い。わが家の子供たちは偶然この幼稚園にはいったのだが、評判通りであることが実感される。

たとえば定期的に先生たちがチームとしてのブラッシュアップをしていく研修を設けているし、保護者たちと、専門的な勉強会とコミュニケーションをかねた機会をつくっている。わかりやすいのが『人事』であろう。各クラスには保育士と保育助手がいるが、なかなか巧みな配置になっているのだ。

適材適所の人事
『カタツムリ組』の場合、保育士の先生は園長でもある。当然のことながらあれこれ仕事が多い。そのため助手の先生は安心して任せられるベテランが配されている。助手先生はかつてアメリカに住んでいたこともあり、外国生活の体験からくるのか、さばけた感じがよい。

長男の『ハリネズミ組』の助手の先生はまだ20代の、こういってはなんだが、けっこう地味な女性である。それに対して保育士の先生はこの幼稚園でもっとも長く勤務している人で、知識も多く、職能はかなり高い。まあ考えようによっては、保育士の先生がしっかりしすぎて、若い保育助手の先生はひょっとして能力が発揮できなくなっているのかもしれない。

ハリネズミの保育士先生の話にもどすと、昨年は幼稚園で行ったあるプロジェクトについて妻とこの先生が共同で50ページほどのレポートをまとめた。そんなこともあって、妻は教育分野のことで、この先生とあれこれ話しをすることがあるのだが、ある時『よかったらどうぞ』と教育の専門書を数冊貸してくれた。こういうものが、さっと出てくるあたりがなかなかのものである。

『テントウ虫組』の先生たちは、資質もキャリア的にほどちらも十分。安定した組み合わせだ。『ネズミ組』の助手の先生はキャリアは長いが、正直なところ資質・職能に少々疑問を感じる。ところがペアになっている保育士の先生は、まだ20代後半から30代前半というところだが、職能も高く元気だ。何よりも仕事が愉しくてしかたがないという雰囲気が伝わってくる。その点、ムードメーカーのようなところがある。

いずれにせよ、この配置は園長が中心になって行ったものとと思われるが、この先生も自分自身の常に職能を向上させようとしているのが、傍目にみてもわかる。妻は園長先生とも教育関連の話をあれこれするのだが、昨今注目されているフィンランドの学校についてのドキュメントのDVDを貸してくれたこともあった。保育士というよりも『教育者』という翻訳が相応しい先生である。(つづく

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