インターローカル ニュース
Interlocal News 2006-06-04 (vol. 130)
─ 先鋭化する自治体マーケティング
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【ニュース】エアランゲン株式会社

【編集後記】寒いビール祭り

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【コラム】

エアランゲン株式会社



ドイツ南部の都市エアランゲン市(バイエルン州 人口10万人)では、昨年秋に自治体マーケーケティング会社『エアランゲンAG(株式会社)』を設立した。同社を通して市内の企業の技術や競争力の情報統括を行うほか、既存の様々な支援機関、研究機関との連携強化を狙う。そして医療技術のイノベーション都市として優位性を獲得するというのが目的だ。

 同市は特別な観光地はないが、エアランゲン−ニュルンベルグ大学があり、落ち着いた学術都市といった趣がある。戦後はグローバル企業・シーメンス社の一拠点にもなった。

 『医療都市エアランゲン』のビジョンを掲げたのは市長のシーグフリード・バライス博士。市長に就任した1996年のことである。同氏の前職は市の経済部門の責任者だった。

 もともと同大学の医療分野は評価が高く、病院や関連の研究機関も多かったが、調査により医療技術の分野でポテンシャルが高いことが明らかになった。そこへ98年にシーメンス社が医療機器の製造ラインをつくる。これは大きな追い風になった。同社メディカル・ソリューション部門では4,000人が働いている。

 さらに医療分野でのベンチャー企業育成のための環境も整えている。これには医療分野の倒産率は低いという計算も働いた。2002年には医療ビジネス専門のインキュベーター(「孵化機」の意)、IZMP(das Innovationszentrum fuer Medizintechnik und Pharma in Erlangen/ エアランゲンの医療技術・医薬のためのイノベーションセンター)がオープン。現在30社が入居している。

 こうした流れを発展させるかたちで誕生したのが『エアランゲン株式会社』だが、経営陣には市長のバライス博士を筆頭に、シーメンス社や大学の学長、起業センターの代表らが顔をならべる。

 同社を設立することにより、既存のビジネスインキュベーターやベンチャー・ファンド、市内に所在する技術や研究を同社が把握し医療都市としての可能性を高めていく方針だが、そもそもエアランゲン自体、決して大きな街ではないため、産官学の人材の距離は近かった。同社の設立は市内のKnow-how とKnow-whoをより組織的に強くするかたちだ。

■グローバリゼーションの中の都市
 ドイツは歴史的に地方分権の国で地域色が豊かである。いいかえれば地方都市の独立性が高く、戦略指向が強い。その延長線にあるのが自治体マーケティングという発想であり、これまでもドイツ各都市で非営利組織やGmbH(有限会社)というかたちで作られることが多かった。

 さらに地元企業からの営業税が自治体財政の大きな部分を占めるという税制事情も加わる。各都市は企業誘致や既存企業のための立地条件を整えようという意識が強く、政策としても重要な項目にある。

 企業のための立地条件の定義は自治体の諸条件によっても異なり、厳密にあるわけではないが、『立地条件』という考え方は1900 年代はじめごろに確立した。当初は交通インフラの整備だけを指したが、次第に税制や自治体の政策などにも着目され、やがて生活の質やエコロジー、通信といった点も立地条件の中に数えられるようになった。

 近年、経済のグローバル化が著しい、これは企業が国際的になり、それにあわせて地域や自治体間の競争の激化をもたらす。エアランゲン株式会社の設立はより先鋭的な戦略性とスピードが必要になっていることの表れかもしれない。

 ちなみに同市は1999年に『医療・技術・健康』、昨年は『健康2005』という年間キャンペーンを行った。これによって市民もなんらかの形で医療都市戦略を身近に知りえることになる。会社にたとえるならばCI(コーポレート・アイデンティティ)といったとこだが、『シティ・アイデンティティ』 と読み替えるほうがぴったりくるかもしれない。

 同市の戦略に対して、起業環境よいがその後人材が流出しているのではといった指摘もあるのだが、それにしても2004年のある調査ではポテンシャルの高い都市として全独7位にランキングされている。(了)

公証人のルプレヒト・カムラ博士(前方)のオフィスで設立手続を終えた設立者たち。(2005年9月23日)

後方左から、マティアス・ヒーゲル氏(IZMP 責任者)、バライス市長、カール-ディーター・グリュースケ教授(エアランゲン・ニュルンベルグ大学学長)、マンフレット・ホプフェンガルトナー氏(シーメンス・エアランゲン代表)、コンラード・バウゲル氏(エアランゲン市経済担当責任者)。
※ドイツ語独自のアルファベットは英語式に表記しています。







編集後記
寒いビール祭り


◆今、エアランゲンでは毎年恒例のビール祭りが行われています。ドイツ各地でそれぞれのビール祭りがありますが、ミュンヘンのオクトーバーフェストなどは日本でもよく知られたビール祭りです。

◆当サイトでも、このビール祭りについて触れていることがあります。ご興味の向きにはごらんください。

州のお墨付き、環境ビール祭り
http://www.interlocal.org/20030802Beer_festival.htm

10 万人都市の“地酒力”
http://www.interlocal.org/20050211_112.htm

◆それにしても、問題はお天気。寒いです。2,3日前の地元紙には州内のある地域で雪が降ったという報道がなされました。エアランゲンは雪が降るほどではありませんが、私自身は陽気にビールを楽しもうという気にはなれません。うーむ。(高松 平藏)


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発  行  人 : 高松平藏 
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