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2003-08-02

 


州のお墨付き、環境ビール祭り



左端=シュナップフ州環境大臣。右端=バライス市長。中央は適用マークをうけた事業者。
ビール祭りの期間中は日によって店が半日で閉まることも。


  ドイツ南部のバイエルン州に位置するエアランゲン市では毎年 6 月、ビール祭りが行われる。今年はビール祭りに出店する飲食業者に州が発行する『環境適用マーク』が渡された。

 同市のビール祭りは 18 世紀から続くもので、今年で 248 回目。ミュンヘンの有名なビール祭り『オクトーバーフェスト』( 170 回)よりはるかに古い。会場は市内北部の小高い丘で、観覧車などの移動遊園地が設営され、100 万人規模の人々が訪れる。丘が会場になるのはトンネル状になったケラー(地下貯酒蔵や地下室レストラン)が数多くあるためで、今年も 5 日から 16 日にかけてにぎわった。

 州の『環境適用マーク』が認定されたのは、地元のビール会社や会場で巨大テントを張って運営するレストランなど3事業者。6 日には州の環境大臣、ヴェルナー・シュナップフ博士が会場を訪れ、授与式がおこなわれた。

 環境適用マークはホテルやレストランの会社向けのもので、91 年からはじめられたもの。『食材は事業所から何キロ以内のものをつかっているか』『照明器具はどんなものをつかっているか』『責任者はじめ、従業員は自転車や公共交通機関を使うといった環境に配慮した通勤をしているか』といった約 700 の設問にこたえて、専門家が審査する。現在 250 の事業所が認定をうけている。なお今回は従来のものを少し変更を加えた『屋台版』の環境適用マークが授与された。

 この日、強調されたのは環境配慮型の経営が経済的にも利点があるということ。ビール祭りに出店する飲食業の経営者にとって環境対策は決して目新しいことではないとしながらも、環境配慮の経営は観光やマーケティングの面からも有効であり、省エネルギーがコストダウンにもつながるとされた。

 他方、ビール祭りそのものは以前から、使い捨てのカップではなく、陶製のジョッキーが使われるなど、日本の野外イベントとは異なるスタイルで運営されている。それでも一時はプラスチックの皿などが使われたことがあったが現在では使い捨てのものはない。

 またゴミの分別はもちろん、ビール祭り専用のリサイクルセンターが用意されるなどの対策がほどこされ、リサイクル率は 50 %を越えている。さらに同市は近い将来は水や電機のエネルギー使用量をチェックして、さらに環境負荷の小さい祭りにしていく予定だ。(了)


(『週刊京都経済』 2003年6月30日付に掲載分)
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陶製のジョッキー。環境配慮以前に缶や使い捨てのカップでビールを飲むのはいかにも不味い、という感覚がある。

【編集メモ】 パンとビール

◆『日本食が恋しくなりませんか』という質問を時々受けます。ここ数年、アジア・ショップが充実してきているため、値段は高いですが、味噌や納豆なども手にはいります。つまり、その気になれば日本食にはありつける状態です。

◆自分の生まれ育った所の食というのは確かに美味しいです。単に胃袋に食べ物がつまった、というだけではなく、心身ともに満腹感があります。それゆえに、体調が崩れたりすると、白いご飯に味噌汁だけでもホッとするものです。

◆一方、ドイツの食にも歴史や風土が培ったと思われる美味しさがあります。たとえば、ビールとパン。どちらも麦からできているものですが、この組み合わせというのが実に美味しいものです。

◆想像してみてください。アサヒ スーパードライと食パンを食べることを。同じビールとパンでもこれはいただけません。やはりドイツのビール&パンの組み合わせの美味しさは。地元の歴史や風土の中で編み出された調理法、製造方法なのでしょう。ちなみにビール祭りでは陶製のジョッキーにブレッツエルと呼ばれる地方のパンをかじりながら飲むことが多いです。

◆日本のビールは100年前に東京で飲まれはじめ、そして『舶来酒』として日本各地へ次第に広がっていきます。現在も基本的にはご存知のように大手がマス・マーケティングに基づく味覚の調整によってビールのバリエーションが販売されています。

◆もちろん、数年前から日本でも地ビールが盛んになってきました。ぶどうの産地ではワインがつくられています。残念ながら苦戦をしいられているところが多いようですが、いま一歩踏み込んで、地元の食の歴史を振り返って、地域経済活性化目的の『輸出品目』というよりも、地元の人が日常的に楽しめるものにできると、少し状況がかわるかもしれません。エアランゲンでビールとパンを食べるたびにそんなふうに感じます。(高松 平藏)

 

 

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