インターローカル ニュース
Interlocal News 2006-03-02 (vol. 127)
─ 地方分権と『鳥の目」
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【コラム】道州制とドイツの地方分権

【連載】インターローカル・ジャーナリズムを考える(2) 記者も市民だ
【編集後記】鳥の目、エコミュージアム

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【コラム】

道州制とドイツの地方分権



 ドイツは16の州に分かれていて、歴史的に地方分権の国だ。ちなみにドイツは日本にくらべてかなり広大な面積を持つと思っている人が時々いるようだが、面積的には同程度。ただ人口は約 8,260 万人と日本よりもかなり少ない。

 ドイツの歴史をたどると、地方の独立性が高いために国としての統一に遅れをとる時期もあった。ドイツという国の形ができてからも、国としてどんなふうに一体感を作り出すかということに腐心しており、現代も州と国の権限について常に変動や議論がある。たとえば教育制度などは州ごとによって異なるのでしばしば混乱を来たす。

 また、州によって当然財務状況も変わる。それを調整するための仕組みもあるが、潤っている州から財政難の州へというカネを分配する流れがある。そのため潤っている州が負担が大きすぎると国に対して異議を申し立てるということもおこる。地方分権もなかなか大変なのだ。

 一方、地方の中を見てみると、歴史的に自治体は独自性をうちだし、街のプロファイルを常に磨いていこうという意識があり、それが実際の自治体の政策に反映される。また、地域報道や街の歴史研究など街のかたちを常に言語化していくようなものがあり、それらが自治体のオリジナリティを確固としたものにしている。また、文化政策などは完全に地方に主権を持たせているため、自治体の政策レベルで街の文化を形づくることになる。

 ところが独自性があるということは対立も起こりうるということでもある。州は国としばしば対峙するし、州の首相ともなると、いつでも国政に出るような意識を持っているように見受けられる。州内の自治体にしても州の政策に対して『けっ、州がまたこんなことはじめやがって』というような雰囲気が少なからずあり、州に完全に追従しているわけではない。むしろ、隣接しあう自治体のネットワークを強めて欧州や世界での存在感を高めようという傾向がある。

 そんなドイツの自治体に生活している人々に着目すると、職住近接が主流。生活も仕事も同一地域で行っているからこそ地域社会に対する愛着が生まれるというものだろう。NPOに相当する組織は18世紀末からドイツでは出現しているが、単なる趣味から公益の実現までを担う非営利組織がいくつもあり、その構成員はいうまでもなく職住近接の『市民』だ。これが自治体の中で多様な人間関係をつくり、結果的に自治体の独自性を高めることに影響しているように思われる。

 日本で道州制の議論が高まっていまるが、地方の自律性の基盤は独自性の確保とそのブラッシュアップにあるといえるのではないか。極論でいえばこれがなければカネを自由につかえるようになっても何に使えばいいのか見えてこない。有形無形の何が地域社会の独自性を確保しているのかを把握する必要がある。そして道州制の議論にはこういう点を仕組みの上でどう織り込んでいくかということが大きなカギだと思う。
(了)




【連載】
インターローカル・ジャーナリズムを考える(2)
記者も市民だ


 前回、ジャーナリズムを具体化する新聞は、『公共の言論空間』と『公共の生活空間』がだぶることが肝要ではないかと述べた。ドイツの地元紙をみると、その 2 つの公共空間が見事に重なっているように思われるのだが、そこに執筆している記者たちはどうしているのであろうか。今回はエアランゲン市を中心に取材活動を行っている私の体験を中心に考えてみる。(つづきはこちら







編集後記
鳥の目、エコミュージアム

◆日本ではエコミュージアムという概念を用いて地域の活性化を目指す動きがあります。以前一度、当メルマガに登場していただいた嵯峨創平さん(NPO法人 環境文化のための対話研究所 代表理事)もそのお1人です。

 環境文化のための対話研究所
 http://www.topicserv.com/idec/

◆この概念、地域全体を上から眺め、自然、文化、産業など地域を構成するあらゆるものを把握、顕在化するということであろうと私は理解しています。実はドイツの地方都市を取材していて常に感じるのがこの視点です。この鳥の視点があるために、都市空間全体に政治、経済、文化、教育、福祉といった要素をどう編みこんでいくかという発想につながり、全体の整合性や一体感、街の独自性といったものを創出しているように思えてなりません。

◆エコミュージアムの起源は1970年代のフランスにあるとか。フランスは中央集権の国でありますが、当時、地方分権への動きがあり、これを背景に登場してきたようです。そもそもミュージアムの機能とは収集・把握・整理といったところにありますが、対象を地域社会に向けた発想ですね。

◆ところで前回、インターローカルニュースが5周年を迎えたことを書きましたところ、数人の方からメールを頂きました。当メルマガが幾ばくかお役にたっているのを感じ、励みになりました。また今後の展開に対しても興味を持っていただいた方もおり、あれこれ事業として成り立つ方策を考えていきたいと思います。(了)


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発  行  人 : 高松平藏 
発  行  日 : 不定期

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