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─ グローバリゼーション、異文化、学校 |
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□□ 目次 □□ 【ニュース】母国語授業の継続を求めて 【コラム】エアランゲンの外国人 【編集後記】グローバリゼーションと学校 |
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【ニュース】 母国語授業の継続を求めて
これは先月 22 日はユネスコが定めた『母国語の日』にあわせて行われた行事のひとつで、トルコ語、ギリシャ語、ドイツ語などの言語を母国語として育つ子供たちに、母国語で読み聞かせた。 さらに同日、午後 7 時からは母国語で話すことをテーマにしたフォーラムが行われ、教育関係を専門にしている市会議員、外国人諮問委員会など約 50 人が集まった。 ドイツは州によって教育制度がすこしづつ異なるが、エアランゲンが所在するバイエルン州の小学校ではドイツ語以外の母国語での授業を行っている。ところが、州政府は1年ほど前から、5 年計画で順次ドイツ語以外の授業をとりやめ、その予算をドイツ語教育にまわす方針に転じた。それに対して、エアランゲン在住外国人による組織『アウスレンダー・バイラート』がエアランゲンの政治家などに働きかけ、州首相へ同施策の取りやめを求める手紙を送った。こうした経緯から、この『母国語の日』の取り組みにつながった。 フォーラムではエアランゲン在住外国人組織のエリザベス・ロシターさん(アイルランド出身)は『州首相への手紙を書くときに私的なグループも含めて様々なグループがあることがわかった。それらを紹介しようと思った』とこの日の取り組みについて語った。 副市長のエリザベート・プロイスさんは『母国語を教えるグループに対して場所や保険について市がサポートしようという議論が高まってきている』と現状を紹介した。 さらに、異文化コミュニケーションを専門にするサビーネ・シッファー博士は『ドイツ語を習得するには母国語がまず強くなくてはならない。またアイデンティティは母国語経由で確立される』と母国語の重要性を語った。 バイエルン州での母国語による授業は、かつてドイツが外国人労働者を呼び込んだことに端を発する。これは、1960 年代初頭から高度経済成長による労働者不足に対応すべくもので、トルコなどから『ガストアルバイター』と呼ばれる労働者をドイツへ積極的に呼びこんだ。その数は 1955-73 年のあいだで約 1,400 万人におよぶ。 同州ではガストアルバイターたちが一定期間に自国へ戻るであろうという前提でその子弟に対して母国語での授業をはじめた。しかしガストアルバイターたちはそのままドイツに残ったため、授業もそのまま続けられていた。 【連載】 エアランゲンの外国人
1970 年の時点で 7%であったが、ゆるやかに増加している。1980 年で 10%を超え、90 年代後半からは 15%程度を維持している。同市の場合、大学街であり、グローバル企業のシーメンス社の一拠点であることから外国人の中には留学などで同市に住んでいるケースも多い。ちなみに日本人住人の数は 97 人(2005年)だ。 1974 年にはエアランゲンの在住外国人による『アウスレンダー・バイラート』がつくられた。直訳すれば『外国人諮問委員会』『外国人顧問会』といったところで、市内で一定の存在感がある。また近年インターナショナルスクールの整備にも力をいれている。企業誘致等の経済政策と歩調をあわせるかたちだ。 ドイツの人口は約 8 千 250 万人。8.8%が外国人である。 エアランゲンの位置するバイエルン州は 9.4%。1988 年には二重国籍を認めるように向けた議論が高まったが実現しなかった。(了) <参考>10万人都市に約100人 2001年の段階でエアランゲンの日本人の住人は60人。その後、増加傾向にある。(左グラフ・エアランゲン統計局資料を元に作成) ちなみにドイツ国内で最も日本人の多い都市は、多くの日本企業が集まるデュッセルドルフ。人口約57万6000人のうち4.7%が日本人。 編集後記 グローバリゼーションと学校 ◆バイエルン州が母国語による授業をはじめたのは、直接的には帰国を前提にした外国人労働者の子弟のためです。しかしそこには、固有の文化を認め、尊重するといった意味を見出せますし、少なくもとも授業廃止に対する反対意見の理由のひとつになっています。 ◆母国語授業の廃止の背景は、予算の問題のみならず、ドイツ語を強くすべきといった意見があるようです。また、近年ドイツの学力低下が問題になっていましたが、ドイツ語をきちんと習得していない外国人の子弟が学力低下の一因という見る意見もあります。 ◆一方、インターナショナルスクールは自治体が国外からの企業誘致を行うときに必要になってくるインフラのひとつです。大学の街でもあるエアランゲンの場合ですと、優秀な研究者の誘致にも一役買うことが考えられます。 ◆学校という範疇で『文化・人権の尊重』『企業・人材の誘致』というふたつの文脈が地域社会に同時におこってきています。この現象をひとことでいえばグローバリゼーションという言葉に集約されると思いますが、今後も注視したいと思います。(高松 平藏) |
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