インターローカル ニュース
Interlocal News 2006-02-15 (vol. 125)
─ メディアの評価と姿勢
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□□ 目次 □□
【インタビュー】子供のために情報の評価を

【ニュース】日独の若者、相互の国の知識低い/メディアの姿勢にも問題
【ご挨拶】インターローカルニュース、おかげさまで5周年

【連載】インターローカルジャーナリズムを考える(1) 2つの公共空間(別ウインドウが開きます)

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【インタビュー】

子供のために情報の評価を
IMV(Institut fuer Medienverantwortung/メディアの責任のための研究所) 代表 サビーネ・シッファー博士


ドイツ南部のエアランゲンでこのほど IMV(Institut fuer Medienverantwortung/メディアの責任のための研究所) を立ち上げたサビーネ・シッファー博士
(=写真)に話をきいた。同研究所はメディアと言語分析などの研究、メディアの診断や広報関係者への助言を行うほか、子供や大人向けのメディア教育に力をいれる。(構成・高松平藏)


■昨年 11 月 29 日には研究所の『パートナー』でもある市の図書館で設立大会が行われました。当日は副市長や地元紙の編集長がスピーカーとして登場したほか、ジャーナリストたちも数多く出席しました。研究所を立ち上げたきっかけは?
『メディア教育が専門で、かつイスラムに関する報道についても研究をしていた。そのため講演や講義、論文執筆といった仕事を個人で請けていました』
『911 のあとは仕事が圧倒的に増えたわけですが、決して経済的につりあうわけではありません。これらの仕事をきちんと経済的にもカバーできるように研究所設立を思い立った。そのため現在、研究所イコール“私”の状態ですが、研究活動を通じての友人にも声をかけて手伝ってもらっています』
『副市長は政治家としては教育・学校関係を専門にしており、研究所のコンセプトに賛同してくださったという経緯があります』

■副市長が特に興味を持っている部分だとは思いますが、研究所ではメディア教育に力を入れたいとか。具体的にはどうのようなことをする予定ですか。
『既存のメディアをチェックして、各内容がどの年齢の子供に適しているかといったことを検証します。たとえば本の場合、私は言語学を研究してきた経緯もあり、言葉から本の評価ができます。されにビジュアルやテーマについても別の専門家らと一緒に評価するといったことを考えています』

■ドイツではコマーシャルなしの子供専用チャンネルの『KI.KA(Kinderkanal)』があります。
『同チャンネル全体でいえば、編集が細かく、音響的には大きな音をアクセントとして頻繁にいれているようなところがあります』
『“マウス”というネズミが案内役として登場する科学や知識を紹介するドイツで有名な番組がありますが、30 分の枠で 6 つのテーマをもってきている。これは 4 歳ぐらいの子供にとっては少し多すぎますね』
『この番組についてメディア研究として調査されたことがあるのですが、医学や心理学、脳生理学といった角度からの調査がない。まあ、脳生理学からいえば、悪い影響は与えていないと思いますが、4 歳の子供の場合、マウスや他のキャラクターしか見ていない』

■インターネット全盛の時代です。
『何かしようという人たちにとってはいい。インターネットを通じていろいろなアクションがとれます。ただ、(情報内容と発信者が関連しあっていることがあり)情報のサークルがぐるぐるまわているだけということが出てくる。しかし、一般に人々は紙媒体ほどインターネットの内容を信じているわけではありません』
『また紙の新聞がなくなるのではないかという議論がありますが、テレビが出てきたときと同様で、情報の内容にすみわけができる。インターネットにはインタラクティブ(双方向性)という特徴がありますが、おかげでジャーナリストは読者からのフィードバックが得られやすい』

■子供のメディア教育という角度からはどうですか。
『情報についての評価をかなりやらなければならないと思いますね。それから子供たちにとって、インターネットによってそれぞれの現象やできごとについては理解しています。ところが、“できごと A” の次に “できごと B” がなぜ来るのかといった関連性についてよくわかっていない。これが問題ですね』

■今後の研究所の運営は
『エアランゲンはグローバル企業・シーメンスの一拠点です。同社は夏休み中に子供を持つ社員のために学童保育のプログラムを用意していますが、その中でメディア教育を取り入れたいと考えており、当方に関心を示してくれています。あるいは学校でのプロジェクトを見込んでいます』
『研究所設立に対して副市長の応援などもあったのですが、現在、自宅が事務所。スタッフ1名に週 20 時間だけ働いてもらっています。確かに経済的な安定は必要ですが、私としてはメディア教育の必要性とノウハウが広がることを目的としています。とはいえ、今年は事務所の獲得や資金調達など研究所として成り立つかどうかの勝負の年ですね』

エアランゲン市の図書館で開かれた設立大会。左からゲルト・ローバサー副市長、シッファー博士、アレキサンダー・ユングクンツ氏(ニュルンベルガー・ナッハリヒテン紙編集長)。大会には地元のジャーナリストなどが集まった。

サビーネ・シッファー博士(Dr. Sabine Schiffer)
コミュニケーション科学とメディア教育が専門。90年代初頭からイスラム関連のメディア・ウォッチングを行っており、随時論文等も執筆。イスラム系のメディアから取材を受けることもある。一方、広報マンとしてのキャリアあり、現在はベンチャー企業での広報も担当している。




【ニュース】
日独の若者、相互の国の知識低い
メディアの姿勢にも問題


 日本とドイツ、両国の若者はお互いの国に関する知識は少なく、しかも不正確なイメージで捉えている。今月26日付、エアランガー・ナッハリヒテン紙はそう伝えた。

 同記事は通信社のdpaによる記事でドイツ・日本経済団体のDJW(ケルン)代表、ケアスティン・タイヒャー氏への取材を中心に書かれたもの。両国のあいだに政治的関係は問題ないが、経済と文化については交流は少なく、相互の知識が驚くほど低いという。

 日本人の若者はドイツに対してほとんど興味がなく、せいぜい「ビール、ベンツ、焼きソーセージ」というイメージだけで、その枠を超えない。ドイツ経済は日本に向けて商品をよりよく売り込まねばならないと指摘する。

 ドイツの若者の日本に対する知識も同様だが、しかしながら剣道や合気道を趣味にしている人や、日本のポップカルチャーやMangaの愛好者も多い。こういったことが今後の両国の経済関係に影響を与えるだろうという予測もしている。

 記事中で両国のメディアへの批判もあった。すなわち、不正確な上に「ビール、ベンツ、ヤキソーセージ」のような常套句によるイメージでお互いの国を表現するという点を非難している。(了)







インターローカル ニュース
おかげさまで5周年

  インターローカルニュースをはじめて発行したのが2000年12月。発行頻度にムラがあり、2004年6月にようやく100号目の発行ができたというありさまです。それにもかかわらず、興味を持っていただいたり、ご意見を下さるかたがおり、嬉しく思います。

 この『おかげさまで5周年』というご挨拶も実は昨年12月に用意していたものですが、メルマガの発行がのび、今ごろお送りすることになりました。

 地域社会に着目した報道を他地域へお送りするというイメージをもちながら発行しておりますが、このような報道に対する考えを「インターローカル・ジャーナリズム」と呼んでいます。5周年を迎えたのを機にこのサイト内で「イズム」についての可能性を考えてみることにしました。

インターローカル・ジャーナリズムを考える
(1) 2つの公共空間

■今後の展開
 さて、今後も淡々と取材・執筆を続けていくつもりですが、さらに将来はエアランゲンで数日間の日程で行うセミナーのような事業が展開できたらとも考えています。

 どういうものかというと、文化や環境問題、地域経済など毎回テーマを絞って行うもので、テーマに関する活動をされている方を対象にエアランゲンへお越しいただきます。

 そして日常から距離をおいた環境で、ドイツの専門家もまじえて自らの活動や考えを発表したり、議論を重ねるといったような内容を想定しています。内容からいえばせいぜい10人ぐらいまで。フォーラムというよりも少人数のサマースクールのようなイメージが近いかもしれません。

 事業モデルをどう構築していくかといったような課題もありますが、あくまでもインターローカル・ジャーナリズムの展開として私は位置づけ、かたちにしていきたいと思います。

■最後に
 インターローカル・ジャーナリズムが読者の方へお届けする問いかけはひとつ、「あなたの街はどうしてる?」ということにつきます。当方の発行するメルマガがなんらかのひらめきなどを提供できると嬉しく思います。これからもどうぞお付き合いください。(了)


■■インターローカルニュース■■

発      行 : インターローカルジャーナル
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発  行  人 : 高松平藏 
発  行  日 : 不定期

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