■■インターローカル ニュース
■■ Interlocal News  2005-10-25 (vol. 124)
─ 地方からの視点
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□□ 目次 □□
【コラム】地方から見たドイツ新政権

【ニュース】 自治体見本市、連邦制の今を映す
【フランケンニュース】エアランゲンのベテランカメラマンによる展覧会

【編集後記】連邦制の推進装置

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【コラム】

地方から見たドイツ新政権



エドムント・シュトイバー氏。
バイエルンでの成功要因はハイテク推進とそれに伴うクラスター政策にあった
 すでに日本でも報道されているが、ドイツでアンゲラ・メルケル氏(女性)が次期首相の座を射止めた。総選挙が行われたのは先月18日。2大政党であるSPD(ドイツ社民党)とCDU/CSU(キリスト教民主・キリスト教社会同盟)はいずれも過半数をとれず、両党僅差。結局、新政権発足にむけて約1ヶ月かけて話し合いが進められ、大連立を組むことで決着がついた。ちなみにメルケル氏は CDU の党首である。

 首相を含む閣内の 16 のポストは両党でわけることになったが、今月 17 日にはCDU/CSU が 8 閣僚の候補リストを発表。経済技術相にはエドムント・シュトイバー氏
(=写真)の名前があった。

 同氏は CSU 党首でバイエルン州の首相である。CSU と CDU はその名の通り、キリスト教精神をベースにした保守政党で両党は姉妹政党で、ひとくくりで扱われることが多い。ただし、CSU はバイエルン州だけで活動している政党である。

◆バイエルンの強い存在感
 そもそもドイツは 16 州からなる連邦国家。伝統的に地方分権の国だが自主独立の国の集合体とみたほうがわかりやすい。

 バイエルン州にいたっては独立国として 6 世紀まで遡ることができる。しかも君主国ではなく共和国だったことから『自由国家(Freistaat)』という歴史的な名称をもっている。また、ハイテク関係のクラスター政策を積極的に進めていることが奏功して経済力でもトップクラス。地勢的にはチェコなど東欧の国とも接しているため、EU の拡大に伴い『東欧の玄関口』と化しているという事情が重なる。

 こうした独自の存在感のおかげで、ドイツ国内では「反バイエルン」的な空気もある。 2002 年の総選挙ではシュトイバー氏が首相候補として名乗りをあげたが、シュレーダー首相に敗れた。これも『反バイエルン』票が少なからず影響したのではないかと見る向きもある。

 同州の独自の存在感と鼻息の荒さは今年の初夏にも発揮された。5 月にスイスの国際経営開発研究所(IMD)が世界の国・地域の競争力ランキング 60 を発表したが、バイエルン州は昨年に比べて 2 ポイントのアップ、18 位にくい込んだ。一方、ドイツ自体は 23 位。昨年より 2 ポイント下がった。この結果をうけて州経済インフラ運輸技術省は連邦政府のまずい政策のおかげでバイエルンのランキングの足をひっぱっていると非難したのだ。

◆ベルリンへ乗り込む?
 ひるがえって、シュトイバー氏は選挙直後からメルケル政権が成立した際、経済相に就任することが取りざたされ、同氏自身も表明していた。それからにシュトイバー氏がベルリンへ行ったのち、州の次期首相にはギュンター・ベックシュタイン氏(州内務大臣)、あるいはエルビン・フーバー氏(州官房長官)が就くとみられている。いずれの氏もシュトイバー氏のとともにバイエルンの経済を戦略的に強くしてきた盟友だ。

 そんな事情を鑑みて、バイエルン州から今回の新政権をみると、シュトイバー氏は大連立による『話し合い』をうまくまとめ、州の足をひっぱっている不甲斐ない連邦政府へ自ら乗り込むという構図が浮かび上がる。

 もちろん、バイエルン州でのシュトイバー氏の舵取りがうまくいったからといって、ドイツ全体の景気回復と失業問題も解決できるとは限らない。連邦制という側面からいえばベルリンへ行くことによって、各州の協力を得る政治力が必要になってくる。シュトイバー氏にとって決して楽なポストではない。むしろ茨の道かもしれない。それにしても、ベルリン−バイエルンというラインはちょっと気になる。
(了)






【ニュース】
自治体見本市、連邦制の今を映す
 



 ドイツ南部のニュルンベルグ市(バイエルン州)の見本市会場で、このほど自治体見本市が行われた。

 同見本市は今月 19、20 日の 2 日間にわたって開催されたもので、見本市と専門会議が行われた。

 出展者数は 190。上下水道などのインフラ関係から、環境保全、除雪車などの特殊車輌、財政サービスまで自治体に必要な業種が並んだ。とりわけ今回は E ガバメントに焦点があてられ、ソフトウエア関連の企業が多数出展した。

 専門会議では自治体の重要な財源になっている「営業税」や新たな公共サービスのありかた、連邦制度の改革、民間とのパートナーシップで事業に取り組む方式「PPP(Public-Private-Partnership)」など、財政と自治体の権限にかかわるテーマがとりあげられた。
 
 同見本市の主催者であるバイエルン自治体議会のヴィルフリード・ショーバー氏によると、見本市の訪問者の約半数は自治体の首長クラス。会議は自治体の長にとって現在のテーマについて勉強ができる機会になっているという。2 日間で約 4,800 人が訪問した。(了)

道路に設置する速度計を販売する企業のデモンストレーション






【フランケン ニュース】
エアランゲンのベテランカメラマンたちによる展覧会



【エアランゲン】今月 30 日から 11 月 27 日にかけてエアランゲンのカメラマン 7 人の展覧会“Erlanger Fotografen”が市内でおこなわれる。いずれも地元の新聞や雑誌、写真集などで活躍するカメラマンたち。

 たとえば出展者の 1 人、Mile Cindric氏は昨年 250 年祭を迎えた同市のビール祭りにあわせて出版された写真集の多くのを手がけた。現在も市内の書店で購入できる。(了)

出展者:
Bernd Boehner
Mile Cindric
Erich Malter
Thilo Moessner
Georg Poehlein
Robert Voit
Wolfang Weissmueller
開催場所: Kunstmuseum Erlangen
住所: Loewenichsches Palais Nuernberger Str.9
tel: 09131/72 59 90
オープン時間: 火-金 11-18時
土日祝日 11-16時
月曜日は休み




【編集後記】 
連邦制の推進装置

◆地域に軸足を置く報道を続けていると、連邦制が成立している理由がいくつか見えてきます。

ひとつの重要な原理は『対立』でしょう。連邦制とは各州の強いキャラクターがあってこそ成り立ちます。裏をかえせば政府と衝突するところも多いということであります。おもしろいのは州内に目をむけても、各自治体が州に対して、渡り合うことがしばしばあることです。

最近こそ日本でも政府に物申す自治体の首長がいますが、地方分権とは『対立構造』の土壌が必要であり、対立するための政治的話法(対話)が不可欠です。対立構造は国全体としてマイナス面と作用することもありますが、それにしても、自治体の闘争心のようなものがなくしては、連邦制は成り立たないように思います。

さて最近、このメルマガもエアランゲンや周辺の都市にお住まいの方がご覧なっていることもあるようなので、試しに【フランケン ニュース】を載せてみました。ドイツでの生活を楽しむ一助になればと思います。(高松 平藏)

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発  行  人 : 高松平藏 
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