■■インターローカル ニュース
■■ Interlocal News  2005-10-07 (vol. 123)
─ 市役所の“オープンドア”
前号次号
□□ 目次 □□
【ニュース】市役所のオシゴト見せます
  ■市役所前の子供フェスティバル
  ■フュルト市のオープンドア・デー

  ■市政運営と市民の関係に一役
【編集後記】イベントとNPO

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【ニュース】

市役所のオシゴト見せます



 
ドイツ南部のエアランゲン市、フュルト市(バイエルン州)で先月末の土日に市役所を公開するイベントが行われた。両市は隣接しており、いずれも人口10万人の小都市。
エアランゲン市市役所前


■市役所前の子供フェスティバル

パトカーに乗る子供たちと、装備などの説明をする“おまわりさん”。

市民課のデスクで“キンダーパス”の発行を待つ子供たち

“ちびっ子記者”の質問に答えるバライス市長
 24日の土曜日、午前11時から16時にかけて市役所および、市役所前の広場で『子供のためのビッグ・フェスティバル』が行われた。これは市の児童部委員長のミリアム・メンター氏と市長室・広報部が共同で行ったもの。

 市役所前の広場や市役所内ではボーイスカウト、児童関連の非営利法人、市営劇場、警察、救急車など約50がブースを設営した。各ブースでは訪問者はスタッフと話したり、冊子やチラシを受け取ったりできる。

 簡単なゲームや実演なども行われる。たとえば警察はパトカーとオートバイを並べた。子供たちは自由に乗ることができ、警察官もにこやかに子供に説明を行うという具合だ。救急車でも同様のことが行われた。最近改装された1階の市民課では子供向けに『エアランゲンの人口は何人?』といった簡単な質問にこたえると、“キンダーパス”が発行されることから、市民課の“デスク”はちょっとした人気ブースと化した。

 また市民課の一角でオープニング・セレモニーも行われた。市長のシーグフリード・バライス博士、メンター氏、連邦家族相のレナテ・シュミット氏が参加。子供による楽器演奏などが行われたほか、学生新聞“ティンテンクレックス”の“ちびっ子記者”たちが公開質問を行ない、市長らは質問に答えた。『子供のフェスティバルなのに、なぜビールを売っているの?』といった質問が飛び出し会場内に笑い声があふれる場面もあった。

 このフェスティバルは今年初めての開催とあって、ロゴを市内の小学校から募集。約500の図案が集まり、フリードリッヒ・リュッケルト小学校2年生の女の子のものが採用された。

■フュルト市のオープンドア・デー
この日、訪問者は消防署でははしご車の上部に乗ることができた。

宮殿を思わせるようなfフュルト市の市役所。この日は塔部分の上部に登ることができた。

都市計画のパネルを見る訪問者たち
 翌25日にはエアランゲン市に隣接するフュルト市で『オープンドア・デー』が行われた。市役所はもとより、市営劇場、消防署など35の施設や部署を公開。2万人が訪ねた。

 宮殿を思わせる市役所には、55メートルの塔があるが、この日は上に登ることもでき、人々は眼下に広がる街の風景を楽しんだ。

 ドイツは都市計画の確かさや古い建築物を大切に使うことで知られているが、都市計画課の一室はそういう特徴がよく出ている。室内には都市の変遷等を説明したパネルをかかげ、職員が説明する。訪問者も自由に質問などができる。

 また古い建築物の修繕の写真を紹介するビラや、住居やオフィスとして改築のうえ利用を勧める冊子なども用意された。

 市役所から徒歩3分程度のところにあるのが市営劇場。同劇場は築約100年の石造り。伝統を感じさせる建築物だが、老若男女が気軽に訪ねる。劇場前の広場にはビールや軽食が楽しめるようにイスやテーブル、そして仮設舞台がしつらえられ、ジャズの演奏などが行われた。またワークショップ、公開リハーサル、技術担当責任者による劇場裏の紹介ツアーなどが行われた。

 ドイツの市営劇場は財政難などで運営に腐心しているが、地元企業や市民サポーター非営利法人の応援や、1990年に就任した運営責任者ヴェルナー・ミュラー氏の運営手腕が奏を効しており、『フュルト・モデル』と呼ばれる。またバイエルン州のシアター・プライスを受賞(1998年)。昨年は同市周辺をさすニュルンベルグ地域のイノベーション賞を受賞している。当日の賑わいはこうした一連の賞の受賞は地元のむすびつきの強さがベースにあることを思わせる。
築100年のフュルト劇場。公共の劇場は運営手腕と地元の企業・市民のサポートがあって、初めて成り立つ。

■行政と市民の関係に一役
 ところで今回の催しは都市と市民の関係をみる上でいくつかの機能が見出せる。

 まずフュルト市のオープンドアは市の情報提供をより強く打ち出せる機会だ。エアランゲンのフェスティバルは子供向けの催しというかたちをとりながら、市役所が身近な場所になりうる機会になっていることも見逃せない

 実はエアランゲン市も2001年に市役所や公共施設を公開する機会を設けたことがある。これを受けるかたちで以前、次回の予定をペーター・ゲルテンバッハ氏(同市広報部責任者)に質問したところ、『今のところ、次のオープンドアの予定はないが、“人々が入って発見する”という公的機会を市は設けなければならない』との見解を述べている。今回の子供フェスティバルはこれを実現したかたちだ。

 また、バライス市長(エアランゲン)は同市を家族に優しい街にしていくという方針を掲げている。フュルト市は『社会福祉の街』を標榜している。そういった市政の戦略イメージや雰囲気を市民のあいだに形成していくのにも一役かっているといえそうだ。(了)






【編集後記】 
イベントとNPO


◆エアランゲンの子供のフェスティバルにはたくさんの“ブース”がしつらえられましたが、その中でフェラインと呼ばれる非営利法人のものがかなりあります。先人は“協会”とか“クラブ”といった訳をあたえましたが、今の日本の感覚でいえばNPOに近いものです。

◆もともと18世紀ごろから街の中で数多くのフェラインが登場しているのですが、こういった催しがあると、それに適したフェラインが登場するという感じでしょうか。厚い“フェライン・カルチャー”が街にはあります。

◆今月3日はエアランゲンの市営劇場で『オープンドア・デー』でした。毎年、足を運んでいるのですが、今年は所用で行けず。残念。

◆子供フェスティバルのロゴは小学生から公募。小学校2年生の女の子の作品が取り上げられたわけですが、セレモニーではそのお披露目も。

◆女の子はフレームに入った自作のロゴを持ち、その両側に市長とシュミット大臣が並びます。そこへわれわれ報道陣はカメラを向けるわけですが、『さあさあ、ジャーナリストさんたちには、いい顔をして』と女の子の耳元にささやくシュミット氏。なるほど、同氏のジャーナリストに対する『心構え(?)』を聞いた気分でした。さすが、大臣にまでなる政治家であります。(高松 平藏)

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発  行  人 : 高松平藏 
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