■自治体クオリティの評価項目
            
              
                
                  
                  
                    
                      
                        | インフラなど | 
                        人材・学校・教育 | 
                       
                      
                        路面電車を含む鉄道網 
                        その他の交通インフラ(空路・水路) 
                        公共交通機関 
                        事業可能な面積 
                        土地価格、賃貸料 
                        近くに市場とビジネス・パートナーがあるか 
                        自治体内でのアクセスのよさ 
                        交通の接続 | 
                        (労働力としての)適当な人材 
                        技術移転、産学協同事業 
                        職業教育・継続教育の質 | 
                       
                      
                        | 行政 | 
                        都市の質 | 
                       
                      
                        税金以外の自治体への公課料の高さ 
                        申請手続きのかかる期間 
                        営業税の価格 
                        環境保全規制 
                        行政サービスのよさ | 
                        経済の雰囲気 
                        住民との問題 
                        外向けのイメージ 
                        居住環境、安全性 
                        生活の質 | 
                       
                    
                   
                   | 
                
                
                  ミッテルフランケン地方の商工会議所が行った自治体の評価項目。 
                  なお分類は筆者によるもの | 
                
              
            
            
            調査の範囲は
ミッテルフランケンとよばれる地域で、バイエルン州の北部にあたる。この地域の全体を管轄する商工会議所が2007年秋に立地拠点の自治体について『採点』した。
            
            ドイツにはスタンドート(立地)という概念があり、都市の発展の尺度として使われているようなところがある。この調査では、とりわけ企業にとって立地条件とは何かということが浮かび上がり、同時に自治体が企業のために何を提供しているかがわかる。
            
            調査報告書によると、その評価項目は21 あるが、これらを4つに分類して見てみよう。
            
            
(1)インフラなど
            まず企業にとって大切なのは、インフラだろう。交通インフラや土地価格、そしてそもそも事業拠点とできる面積がどのぐらいあるのか、ということがある
            
            それからインフラといえるかどうかわからないが、近隣に企業にとって市場やパートナーとなりえる企業があるかということも重要なことである。
            
            
(2)行政
            
              
                
                  
                  
                    
                      
                        | 1 | 
                        官庁の脱ビュロークラシー | 
                       
                      
                        | 2 | 
                        事業可能面積の増加計画 | 
                       
                      
                        | 3 | 
                        安全性、美化の向上 | 
                       
                      
                        | 4 | 
                        駐車場料金の廃止、自治体に対する公課料金の値下げ | 
                       
                      
                        | 5 | 
                        都心の魅力の向上 | 
                       
                      
                        | 6 | 
                        地域の外向けのイメージ向上 | 
                       
                      
                        | 7 | 
                        職業訓練・継続教育の向上 | 
                       
                      
                        | 8 | 
                        交通インフラの拡充 | 
                       
                    
                   
                   | 
                
                
                  立地条件の改善を希望する項目とその優先順位 
                  ビュロークラシーの改善要求がもっとも高い | 
                
              
            
            行政のサービスや、申請手続きといったことも企業経営にかかわってくるものである。またドイツの自治体には営業税という税金がある。自治体による独自の税率があり、企業にとってはできるだけ税率の低いところを選びたいのは当然だろう。あるいは環境問題に対する規制の強さなども企業にとって立地拠点を選ぶときに重要になる。
            
            報告書では企業側が立地条件の改善を求める項目と優先順位についても書かれているが、そのトップにくるのは『お役所』のビュロークラシーを小さくしてくれというものだ。これはドイツ病ともいえる一面で、ビュロークラシーの問題はよく問題になる。企業の自治体採点でも『やっぱり』とおおいに納得させられる結果だ。
            
            
(3)人材・学校・教育
            日本とちょっと勝手が違うのが、労働力を問題にしているところだろうか。ドイツ社会は職業制度と意識の高く、『どの会社に帰属しているか』というよりも『どんな職業か』ということのほうが前に出てくる。それから人々のライフスタイルでいえば、職住近接が基本だ。そんなことから、自治体に住む労働力や、その職業教育を採点するわけだ。さらに企業と直接関係してくるところでいえば、技術移転などの産学の連携についても問うている。
            
            
(4)都市の質
            さらに自治体がもつ外向けのイメージをはじめ、経済的な雰囲気、治安や居住環境や生活の質も採点の対象になっている。
            
            
■<労働力=住民>という視点
            面白いのは企業の採点対象の項目に生活の質や外向けのイメージ、教育といったことを問うていることだ。いうまでもなく、これは市民にとっても重要な項目であるわけだが、大雑把にいえば、教育や都市の質の高いところには企業にとって優秀な労働力がある、というふうに見るむきがあるということであろう。
            
            『生活の質』といったときに、具体的には文化が重要な位置をしめるが、すなわち自治体が『文化』をがんばると、結果的に市民にも、企業にも利益がもたらされるという構造があるということである。企業誘致のために自治体は交通などのインフラ整備といった立地政策を進めるわけだが、教育や文化といったことも立地条件の範囲にはいってくるのもこのためだ。
            
            一方、日本の自治体には文化と経済の深いつながりは見出しにくい。そもそも住民=労働力というふうに捉えていることがほとんどないのではないか。
            
            ドイツにいると、『文化は経済のエンジン』だの『文化はパンの上のデコレーションではなく、酵母菌だ』といったような言い方がされることがある。調査の結果をてらしあわせても、経済分野で立地拠点の文化とか教育が大切だということが前提になっていることがうかがえる。(
つづく)