2008-01-30 (vol. 143) | |||||
─ 企業の要望、自治体の経済政策 |
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□□ 目次 □□ 【インタビュー】ドイツ地方都市の舵取り、EUにらみ/バライス市長 【ニュース】企業が自治体を採点/選挙にあわせ政治家へ要望 【編集後記】協力と競争 |
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【インタビュー】 ドイツ地方都市の舵取り、EUにらみ エアランゲン市 市長 シーグフリード・バライス博士 ドイツは連邦制で、歴史的にも地方分権の国である。そのため地方に目を転じると自治体の独立性が高い。エアランゲン市はバイエルン州の北部にある人口10万人の都市で、隣接するニュルンベルク(50万人)、フュルト(11万人)と連携しながら医療技術をコアにすえた経済政策で成功している。そんな都市の首長はどのような考えをもって市政を運営しているのだろうか。市長のバライス博士に話をきいた。 続きはこちら 【ニュース】 企業が自治体を採点 選挙にあわせ、政治家へ要望 バイエルン州の北部にあるミッテルフランケン地方管轄の商工会議所が、このほど同地方の企業を対象に立地環境に関するアンケートを行った。いわば企業が自社にとっての都市の評価を行うかたちだ。
ミッテルフランケン地方全体の評価は2.7ポイント。アンケート調査は1996年からはじめたが、このときは3.42ポイントだった。その後、毎回ポイントはよくなってきている。企業にとって、同地方の経営立地の環境が向上していることがうかがえる。 トップに輝いた自治体はエアランゲン市(人口10万人)。2.37ポイントを獲得した。同市は前回も一位の評価をうけており、トップの座を守ったかたちだ。 ちなみに1996年に行われた最初のときに比べて1.35ポイント上昇している。大学町でもある同市は90年代後半から産官学のネットワークを強め、医療技術ベンチャーの育成に焦点をあてた経済政策を展開している。 ■自治体の立地政策へ 今年はバイエルン州内の自治体の選挙が行われる。商工会議所はアンケート結果を地方の政治家に示すことで、経済界の要望を自治体の政策につなげるのが目的だ。企業経営の立地環境は年々向上しているが、官僚主義を減らし、交通インフラ・教育機関のさらなる向上、地方の外向きのイメージ向上、そして市街の美化・整備を進めること、といった要望を掲げている。 ミッテルフランケン地方は5つの市、7つの郡で構成された行政管区で人口は約170万人。最大の都市は人口約50万人のニュルンベルク。ドイツの自治体は経済や文化、社会福祉といった都市の質と機能の向上を図っていこうという考え方が強い。そもそもドイツは日本のような一極集中がなく、地方分権の国だが、こうした立地条件を発展させることで地方における生活の質と経済的強さを実現させている。(了) 関連記事:企業にとっての自治体クオリティ1−地方の調査より 【編集後記】 協力と競争 ◆ドイツの自治体をみていると、お互い協力体制をとりつけている一方で、競争をしている点が目につきます。このふたつは、ひょっとして地方分権の勘所かもしれません。 ◆連邦制で重要な概念が『補完性の原理』。これは自治体の自助で難しければ次の上の行政区や州といったレベルからの支援をとりつける、という問題解決に関する援助の順序の原理です。 ◆この原理、裏をかえせばそれぞれのレベルで自治の能力と権限を有することでありますが、自治体の競争力は自治能力を高めることにつながり、お互いの協力体制は自治では限界のある部分をカバーしようということでしょう。しかも意識はドイツ国内をとびこえ、EU内でどういったポジションを獲得すべきか、という視点からたっている。 ◆連邦制とは地方分権のためのひとつの形態ですが、ドイツはおおまかにいえば連邦、州、自治体の3つのレベルの構造があり、それぞれの自治の権限を持ちます。ドイツでは絶えず連邦制に関する議論、主に各レベルでの権限についての議論がありますが、ある意味『補完性の原理』に関する議論ともいえるでしょう。 ◆日本でも地方分権の議論で、『補完性の原理』はよく登場しますが、自治体が自治体としてやっていくには、どの範囲の権限をどれだけ確保しなければならないか、という議論からアプローチしていくことも肝要かもしれません。(高松 平藏) |
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■■インターローカルニュース■■ 発 行 : インターローカルジャーナル http://www.interlocal.org/ 発 行 人 : 高松平藏 発 行 日 : 不定期 Copyright(C) Interlocal Journal |
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