■■インターローカル ニュース
■■ Interlocal News  2005-09-14 (vol. 122)
─ ニュルンベルグとアジア
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□□ 目次 □□
【ニュース】ニュルンベルグでアジア見本市

【コラム】 EU拡大と地方都市─ニュルンベルグ
【編集後記】文化と経済

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【ニュース】

ニュルンベルグでアジア見本市



 ニュルンベルグの見本市センターでこのほど初めての消費者向けの雑貨、ギフト、家庭用製品を扱った『アジア・スタイル』という見本市が行われた。バイヤーなどのみを対象にした専門見本市で、先月29-31日の3日間にわたり開催された。
もっとも目をひいたモンゴルのブース

 同見本市には中国、インド、ネパール、パキスタン、フィリピン、ドイツ6カ国から256 の出展があったが、毎年2月に同見本市センターで行われるおもちゃ見本市に比べると、10分1程度。その上初めての開催だ。しかしながら注目は高い。同見本市の広報担当者によると、地元のみならず全国、EU諸国の40以上のメディアが取材に訪ねており、国営放送局のZDFでも紹介されたという。

具体的な値段交渉をする様子も見られた。
 会場内の大半を占めるのが中国企業のブースだ。家庭用製品を扱う中国企業ブースの責任者は「当社は日本へも輸出している。価格のみならず、デザインや品質にも自信がある、来年も出展したい」と息巻く。

 バイヤー側にも好評だ。ドイツ人のある女性バイヤーは『このメッセは今回が初めてで、規模も決して大きなものではない。しかし商品は魅力的なものが多く次回も来るつもり』という。

 また、ドイツ側からはシェンツェン(深セン)のヨーロッパ事務所(ニュルンベルグ)も出展。ブースを担当しているアクセル・アイセレ氏(同市経済局)は『ドイツ、スイス、オーストリア、あるいはオランダの経営者が物流に関する質問にひっきりなしにやってくる。ここはとりわけ“アジア-欧州 物流情報センター”と化していますよ』と笑う。

■自然保護と両立する商品──モンゴル

『外国との取引で困った経験のある人』との問いに多数の手が挙がった。ビジネス上の異文化理解のセミナー。
メッセ会場で視覚的に訪問者の目をひいたのがモンゴルのブース。ゲルと呼ばれる分解・組立が容易なテントのような移動型の家を活用してしつらえたもので、地元紙も写真入りの記事を掲載した。

同ブースではフェルトなど自然素材を加工した商品が数多く並ぶ。SME Promotion Project (Small and Medium private Enterprises )のアユア・オユンさんによると自然保護と経済の両立を目指した商品だという。


 また、ビジネス上の異文化理解などのセミナーも行われた。3日間の訪問者は3,000名。同見本市のディレクター、ヘルタ・クラウスマン氏は同見本市を毎年恒例のものにまでしていきたいとしている。(了)






【コラム】
EU拡大と地方都市─ニュルンベルグ

 

 ニュルンベルグといえば、戦後の裁判やワーグナーの曲、あるいはクリスマス市場を思い浮かべる人がいるかもしれない。

 同市はバイエルン州の北部に位置する街で人口約50万人。今年4月末、この都市は隣接するエアランゲン、フュルト、シュワバッハを中心にフォルヒフェィム、ノイマルクト、バンベルグ、バイロイト、アムベルグ-スルツが連携。『メトロポリタン地域 ニュルンベルグ-エアランゲン-フュルト』という広域ネットワークを構築した。

 昨年はポーランドやチェコなど東欧諸国がEUに加入したことをうけて、EUそのものの重心が東に移動しつつあるが、それに伴い東欧諸国に隣接するバイエルン州は『東欧の玄関口』と化している。

 こうした傾向は州都ミュンヘンに次ぐニュルンベルグも例外ではない。というよりも、そもそも歴史的にいえば、ニュルンベルグは東欧諸国と中央ヨーロッパを結ぶ交通の要所として栄えていた。すなわち旧東西ドイツ統一に引き続き、EU が拡大することは、地勢的条件が『中世に逆戻りしてきたようなものだ』(アクセル・アイセレ氏、同市経済局)。

 そこへ、数年前からアジアへの関心も高まってきている。もちろん近年の中国の経済力がアジアに対する関心を誘発しているが、ニュルンベルグは実際にシェンツェン(深セン)と経済ネットワークを構築しており、シェンツェン(深セン)・ヨーロッパ・オフィスは同市においている。また、市内の単科大学の教授たちが中心になって90 年代後半からシェンツェン(深セン)など中国の都市へ環境技術の移転プロジェクトなども行っている。

 市内中心部では数年前から毎年『アジア・マーケット』と銘打ったイベントも行われている。同市が主催しているもので、経済局のクラウス・ツアシブニアク氏(地域コーポレーションとプロジェクト参事)は『人々のアジアに対する精神的距離を縮めようという狙いがある』と述べる。

 さらに今回の見本市が加わる。『ニュルンベルグは東欧のみならず、“アジアの玄関口”も目指している』(アイセレ氏)。

 EU拡大、グローバル化といった中で国とは別に存在感や発言力を高めようというニュルンベルグ地域の姿が見えてくる。(了)






【編集後記】 
文化と経済


◆中国・シェンツェン(深セン)と経済パートナーシップを結んでいるニュルンベルグ。『経済と文化は両輪』という考えが強いせいか、たびたびアート・プロジェクトが行われています。

◆そういえばグローバル企業のシーメンス社もそう。同社の取締役会直轄の組織に『アーツプログラム』という部署を設けています。メセナ(芸術支援)の組織と思いきや、この部署は同社主催のアート・プログラムを企画・運営する部署。『企業によるアート』を行うわけです。

◆経営的にはCI(コーポレート・アイデンティティ)の一環として位置づけられており、世界各国にある同社の拠点でアートプロジェクトを継続的に行っています。

◆こうした経済セクターとの行為を、欧州の植民地政策の反省や蓄積を経た『現代版』という見方もできましょうが、経済のグローバル化は地域性を抹消させたり、逆に対立や摩擦などの形で際立つのもの。アートは地域性をうまく顕在化させるいい方法だと思います。

◆それにしてもモンゴルのブースで『この家は確か“パオ”というんですよね』と訊ねたとたん『いいえ、“ゲル”です』とすかさず否定されました。『あれれ、記憶違いだったか』と後で調べたところ、パオは『包』と書きます。家の形状から漢民族が勝手に名づけたものとか。なるほど、こちらの勉強不足を知るところでした。(高松 平藏)

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発  行  人 : 高松平藏 
発  行  日 : 不定期

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