ドイツ・エアランゲン在住ジャーナリスト
高松平藏 のノート
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2011年3月29日



ローカルメディアの影響力


今年にはいって地元メディアに少しばかり出た。考えたこと、狙ったことなどメモ程度に書きとどめておきたい。

日本の存在感高めたか?
2月に地元のラジオ局バイエルン放送局による文化番組でエアランゲン周辺を指すフランケン地方の中の日本をテーマにした番組が放送された。

同地方で活躍する日本人芸術家などが紹介されたが、その中でエアランゲンに住み、日本向けに記事を書いているジャーナリストとして私のことも取りあげていただいた。そしてドイツで行われる日本関係の文化イベントについて短いコメントを話した。

面白いのは、ほんの少し紹介されただけなのに、『なかなか面白い番組だった』と感想を寄せてくれた人も数人いたし、義母のほうにも『お宅の義理の息子さん出てはったやないの』といった類の電話があった。おそるべしローカルラジオである。

それにしても昨今、ドイツで『アジア』といえば中国ばかりに注目がいき、マンガや寿司などの人気でなんとか存在感を保っているような状況だが、すこしばかり日本の存在感を高めることにつながったのではないかと思う。

20年低迷していただけではない
エアランガーナッハリヒテン紙にコメント記事を寄稿(2011年3月15日付)
それから一カ月もしないうちに、次は地元紙からコメントを求められ、短い記事を寄稿することになる。見出しは『インターネット上の不安な時間』。いうまでもなくこのたびの震災に関することである。そして日本は世界中をくぎ付けにする。

原稿は地震がおこって3日目に執筆。内容は震災当日、ネット経由で状況を知り、ショックを受けたこと。そして友人の安否をメールで確認したことなど。それに加えて、全体像としては神戸の震災で学習したことが動いているといったようなものだ。もっとも、救援活動については後々いろいろ問題や課題が出ているが、震災後の数日に関しては神戸の震災でのことが十分生かされているように思えた。

そして何よりもメッセージとして強調したかったことが次のようなことだった。
『この20年、日本経済は低迷。だが(NPOや公共性など)社会の結束や連帯を強化する議論を続けてきた20年でもある。(震災によって)その議論が目に見えるかたちになるだろう』

コメントが掲載された時には日本関連の記事で紙面は埋め尽くされており、どれだけの人にこのメッセージが伝わったかは分からない。しかし昨今の日本の自信喪失ぶり、低迷ぶりはドイツでも認識されているのを感じることはあったし、経済的に低迷した20年ではあったが、同時に社会を再構築するための基本部分は随分議論が尽くされているのを感じており、これをきちんと評価すべきだとも普段から感じていたのだった。

それにしても、地震がおこった日から数日、たくさんの友人・知人から日本の家族や友人は大丈夫かという安否の電話やメールをたくさんもらった。新聞に掲載されるとなおさらだった。中には花束と復興をお祈りしますという旨のカードを拙宅まで届けてくださった方もおられた。たいへん嬉しく思うとともに、ローカルメディアの影響力を同時に再確認したのであった。(了)


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