ドイツ・エアランゲン在住ジャーナリスト
高松平藏 のノート
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2010年3月18日



ドイツのテレビで『日本週間』


先日、日本に関するテレビ特番がドイツで放送された。圧倒的な内容だったので、書きとめておきたい。


多様な切り口
放送から随分、日がたってしまったが、今年の1月18日から24日にかけて、公共放送『3sat』で日本をテーマにした特番を組んだ。同放送局は文化や知識といったものを専門にしていて、オーストリアやスイスでも見ることができる。

さて、特番の何がすごいかというと、ボリュームの多さと切り口の多様性だ。たとえば18日の月曜日を見てみよう。ちなみに元のタイトルはドイツ語である。以下、内容が分かる程度にざっくりとした翻訳で書き進める。

スタートするのが20時15分。まずは『世界の宝』として、厳島、京都、広島を紹介する番組だ。

次に『年老いた、経済の奇跡の日本』。少子高齢化の“経済大国”にせまるルポータージュ。問題点とポテンシャル両方をとりあげているところがよい。

そして、東京の鉄道、つまりロジスティックのテクノロジーをとりあげた番組。昨今、世界的に都市化が進み、スマート・シティというコンセプトで都市ビジョンをつくろうという傾向があるが、そんな中、東京のように人が集中する巨大都市のロジスティック・テクノロジーというのは特筆すべきものなのかもしれない。

トリが22時25分からはじまる坂本龍一氏のインタビュー番組。内容的には映画『戦場のメリークリスマス』あたりからはじまって、同氏のアーティストとしての仕事と魅力をインタビューを通じて紹介するというもの。

実は最近こそ新譜をマメに買ったりすることはなくなったが、私はYMOの頃からのファンで、今もiPodに氏の曲がけっこう入っている。10代のころ、氏が出演していたラジオ番組を必死で聞いていたこともあり、この日は古い知り合いとドイツで再会した気分で見た。

雑誌のような番組群
ほかにも、タイトルを並べておくと、『日本人の余暇』『過労死』『日本の変化、芸者とゲームボーイ』『京都の俵屋旅館』『カミカゼ』『花火』『女子プロレス』『食』などのほか、坂本龍一以外に芸術家の村上隆や、ヴァイオリニストの五島みどりに着目した番組もあった。

さらに日本の現状に関する討論会などもあったほか、松嶋菜々子主演『リング』、『殯(もがり)の森』(河瀬直美監督)、『隠し剣鬼の爪』(山田洋治監督)といった映画も放送された。こと映画に関していうと北野作品や宮崎作品といった『海外でおなじみ』作品ではなく、なかなかバランスを考えたラインナップだと思う。

また、『日本とロシアの狭間の漁師』といった、日本ではなかなかクローズアップされないテーマが取り上げられていたし、『サムライと刀』では日本のテレビではかえってみることができない刀づくりが紹介されていた。私は最近、技術史のような分野に興味があって、冶金に関する日本技術の一端を見ることができて、面白かった。

もちろん、中にはタイトルを見ると、『外国のテレビ局がいかにもとりあげそう』というものもあるし、討論会を見た妻によると、『アジア・コンサルタント』と名乗る論者も出演していて、イマイチだったとか。余談めくが、ドイツにいると『アジア・コンサルタント』という肩書の人と時々お目にかかることがある。申し訳ないのだが、いまだに大味なよろづ屋さんのような印象がぬぐえず、とっつきにくい。

ひるがえって私自身、これらすべての番組を見たわけではない。また番組によっては、10年ぐらい前に制作されたものもある。それにしても、特番の番組表を見ていると、まるでドイツで編集された日本特集の雑誌かムック本の目次のような面白さがある。考えたら、逆に日本の放送局がドイツのことをこれほどまとめて、特集番組を組むこともあるまい。

また後日、何人かのドイツ人の友人と会った際には、この特集番組が話題になった。昨今、日本の存在感が低下傾向にあるなか、少しほっとするような番組群であった。(了)


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