2010-11-30(vol. 154) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
─ 都市の創造性とは? |
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□□ 目次 □□ 【ニュース】成長力ランキング、10万人都市がトップに 【編集後記】外国系市民と寛容 |
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【ニュース】 成長力ランキング、10万人都市がトップに 『クリエイティブ・クラス』調査 ドイツ南部のエアランゲン市(人口10万人、バイエルン州)は、このほど行われた成長力の調査『ドイツのクリエイティブ・クラス』で首位についた。 『クリエイティブ・クラス』はアメリカの都市経済学者リチャード・フロリダ氏が提唱したもので、工業化のプロセスを経て、知識社会化した都市の成長力を見る指標だ。工業化の時代は労働者と資本があれば発達したが、知識社会の時代ではクリエイティブ層がひとつの地域のエンジンになる。ドイツの研究機関が国内の413の自治体と地域をこの手法で調査したところ、エアランゲン市がトップに。先月10月11日、市内の医療ベンチャー専門のビジネスインキュベーターで記者会見が行われた。 創造性の指標になっているのがTTT。それぞれTechnology(技術), Talent(才能), Tolerance(寛容)をさすが、これらに関わる人材がどのぐらいいるか、それにまつわる動きがどれぐらいあるかがポイントになる。 具体的にはソフトウィエアやエレクトロニック、バイオテクノロジー、エンジニアなどの人材、さらに特許の数がどれぐらいあるか。さらに起業数や産業界が研究分野にどれぐらい投資しているかということが『技術』の指数になる。 さらにIT関係、数学者、物理学者、建築家、教育関係者、芸術家、デザイン、エンターテーナー、スポーツ、メディア関係の職業の人材が『才能』のポイントになるが、学士号を持つ人材の数もヒューマンリソースとして指摘されている。 『寛容』とは都市が『異なるもの』に対していかに、受け入れられるだけの余裕があるかということだが、具体的には外国生まれの者、同性愛者、俳優、音楽家、監督、デザイナー、写真家、ダンサーなどを指す。
■都市の競争力は規模ではない エアランゲンは人口10万人の都市だが、トップ10の都市を見ると100万人を超える大都市はミュンヘンとベルリンのみ。クリエイティブ層は雰囲気や環境が良く、国際的でオープンな都会を好むとされる。こうした条件は大都市の専売特許に思われがちだが、都市の競争力は決して規模ではないことがうかがえる。 たとえば8位についたベルリンを見ると『創造』のポイントは高いが、それを支援する資金が不足している。またアメリカの調査では、クリエイティブな人が集まると他の才能ある人も集まってくるとされているが、ドイツではそういうわけでもない。すなわち社会と政治的な都市運営にまつわる『調整』の枠組みが必要だという。 ■芸術家が少ない? 一方、エアランゲン市のポイントを詳細に見ると、『技術』『才能』のポイントでは抜きんでているが、『寛容』ポイントでは55位とふるわない。『寛容』の中の一要素であるアーティスト数のポイントでは141位だ。 シーグフリード・バライス市長は『市では以前から“伝統からのオープン”というモットーを掲げているが、寛容のポイントが低いことに対して真摯に受け止めたい』と述べる。また市の文化担当責任者のディーター・ロスマイスル氏は同市の家賃が高いことが影響していると分析。音楽家のシュテファン・ポエチュ氏は『エアランゲン市は保守的で安定していて、特別に(文化的・社会的な)火が燃えている状態でもないから』という。 ■外国系市民の存在
エアランゲン市の外国人比率は約15%。約140カ国からきている。『移民を背景にした人』と範囲を広げると、外国系市民の数は25%にまでなる。大学や研究機関、グローバル企業のシーメンス社の一拠点になっているので、必然的に同市にやってくる外国人も研究者やホワイトカラーが多い。そのせいか外国人にまつわる問題点はそれほど目立たない。『職場では英語がとびかっている』(ゲルト・ロウクス教授、マックス・プランク研究所)。 先月発行されたのが、同市に住む20カ国30人の外国人市民の物語が書かれた書籍『私たちはエアランゲン(原語:ドイツ語)』だ。ここに登場する外国人市民は起業家、アーティスト、研究者などとして生活している人物たちが登場。 この書籍は同市副市長のエリザベート・プロイス氏と国際・統合政策担当のシルビア・クラインさんが計画した。同書によると、毎年、人口の10%が同市を出ていくが、同時に10%が新規で、あるいは一度出た人が戻ってくるという。流入・帰還する人は、エアランゲンで何か新しいことをしようと積極的で、しかもよそでの経験を積んできているかたちだ。こうした人口移動が、同市の活力を持続させているひとつの理由かもしれない。 同書では、エアランゲンは特筆すべき観光資源があるわけではないが、オープンで発明・起業意識が高く、市内で文化・生活を体験した人は残りたがるとしている。(了) 【編集後記】 外国系市民と寛容 ◆21世紀のひとつの課題は外国人問題。人の移動が盛んになると、必然的に身の回りに外国人が増える。『外国人問題』とひとくちでいってもいろいろあるが、問題がおこる原因のひとつに『価値観の摩擦』がある。別の言い方をすれば、価値観が異なる人たちが身近にやってくるということだ。これを都市や組織の『創造性』に高めるにはなかなか大変だと思う。 ◆アメリカの文化人類学者、エドワード.T.ホールは世界の文化を『高文脈』と『低文脈』という分類をした。日頃から人間関係を強め、細かい情報を持ち、文脈の共有化が高いのが日本やラテン系。一方、その逆がゲルマン系、アングロサクソン、北欧系。つまり、『阿吽の呼吸』のようなものが難しい。 ◆外国人が増えると『価値観の摩擦』が発生しやすくなる。これによって共有されていた既存の文脈が役に立たなくなる。ひらたくいえば『常識』とされていたことが共有されなくなるので『阿吽の呼吸』のようなものが難しくなる。そんなことを考えると、『(スマートに)対立するための話術』という意味での対話技術が必要。これがあると一から文脈を作ることができる。 ◆ホールによると、ドイツは『低文脈文化』ということになる。理屈からいえば対話によって、共通の文脈を一から作っていけそうな気がする。それでも、日常生活をみると外国人が狭義のドイツ文化と摩擦を起こすことも少なくない。『異なる価値観』をうまくぶつけあえる『寛容』をどれほど作れるかがひとつの大きな課題になる。(高松 平藏) |
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