2010-04-10(vol. 152)
 ─ 連邦と自治体のクラスター政策
□□ 目次 □□
【ニュース】医療クラスター、独国内トップに

【編集後記】クラスターの成長モデル

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 【ニュース】
 
医療クラスター、独国内トップに
 ニュルンベルク広域地域のメディカル・バレー

エアランゲン市で起業したウエーブ・ライト社。レーザーを利用した医療技術で世界に展開している。
ドイツ南部のニュルンベルク市(バイエルン州))を中心にした広域地域はこのほど、ドイツ連邦教育研究省によるトップ・クラスター(集積)のコンテストで5つのうちのひとつに選ばれた。

連邦教育研究省は今年1月に発表したトップ・クラスター5つのうちひとつが、医療クラスターの『メディカル・バレー』。ニュルンベルクを中心にした広域自治体が連携している『メトロポリタン地域・ニュルンベルク』が推進しているクラスターだ。

同地域内では医療クラスターとしての具体的プロジェクトとして、クオリティを向上させ、かつコストを下げる医療技術の開発を目的とした43のプロジェクトが選出されている。とりわけ放射線、インテリジェントセンサーあるいは、コンタクトレンズなどの『眼の分野』での開発が目を引く。コンテストで選ばれたことにより、引き続き発展のために、連邦政府から最大、4千万ユーロ(約50億円)が投じられる。(1ユーロ=125円)

現在、同広域地域内では180の医療技術関連会社があり、1万6000人の雇用を創出。ここ8年では3000人の雇用ができた。コンテストで選出されたことを受けて、今後、中期的にはIT、エンジニア、医師、医療技師など医療技術関連の2500人程度の雇用創出が期待されている。
クラスター名 分野 場所
ソフトウェアクラスタ- ソフトウエア ダルムシュタット、カイザースラウテルン、カールスルーエ、ザールブリュッケンとヴァルドルフの領域
(ヘッセン州、ラインラント=プファルツ州、ザールラント州)
メディカル・バレー
メトロポリタン地域・ニュルンベルク
医療技術 メトロポリタン地域・ニュルンベルク(バイエルン州)
ミュンヘン・バイオテッククラスターm4 医薬 ミュンヘン(バイエルン州)
マイクロテックサウスウェスト システム技術・製造技術のソリューション バーデンビュルテンベルク州(ドイツ南西部)
ルール効率物流クラスター 物流技術 ルール地方(ノルトライン=ヴェストファーレン州、ヘッセン州)
表:連邦研究所のクラスターコンテストで選ばれた5つのクラスター

メディカルバレーの中核、エアランゲン
医療ベンチャー専門のインキュベーター。(エアランゲン市)
同クラスターの中核を担っているのが、ニュルンベルクに隣接する人口10万人の都市、エアランゲン市。シーグフリード・バライス博士が市長に就任した1996年に経済政策として医療都市を打ち出した。

同市はもともと、大学町であるほか、グローバル企業のシーメンス社の最先端医療機器の開発部署がある。さらには、80年代からハイテク分野のビジネス・インキュベーターが作られるなど、ポテンシャルは高かった。それらを経済政策として集中的に環境を整えていった。

さらに、バイエルン州が州内でクラスター政策を展開する中で、エアランゲンの医療都市政策も合同するかたちで、さらに投資環境なども整備されていった。とりわけ、2003年にできた医療ベンチャー専門のビジネス・インキュベーターは医療都都市の象徴的存在だ。2007年には、エアランゲン周辺地域を包括した支援組織「メディカル・バレー欧州メトロポリタン地域・ニュルンベルク」が設立されている。

なお、連邦教育研究省によるクラスターコンテストは今回2回目。前回とあわせて10のクラスターが政府からの支援を受けることになる。今回のコンテストでは23のクラスターがエントリーされた。アネッテ・シャヴァーン連邦教育研究大臣は、世界でもトップクラスのクラスター支援を行っているとの自負を表明している。(了)



【編集後記】
クラスターの成長モデル

◆都市をどう運営していくかというときに、ドイツの場合、鳥瞰的に都市をチェックし、戦略を策定していくような指向がある。医療クラスターの中核を担うエアランゲン市もやはり市内を鳥瞰的に見ながら、医療技術への道を進んだ。

◆ドイツの自治体の統治の考え方に『補完性の原理』というものがある。自分で解決できないものは隣人同士で、それでも難しければ自治体、さらに困難であれば広域地域、州、連邦という具合に自治を行う際の課題に対する解決の順位の基本原理だ。

◆エアランゲンの医療技術政策の展開はこの原理に沿って考えるとわかりやすい。すなわち、医療政策を広域にまで広げ、やがては州をも巻き込み、ついには連邦政府からも支援をとりつけたかたちだ。

◆もちろん、連邦政府やバイエルン州ががクラスター支援の政策を打ち出し、それに『うまく乗っていった』『双方の目論見が一致した』ともいえるが、自治体が打ち出した政策をクラスターとして成長させていくひとつのモデルが見出せるように思う。(高松 平藏)

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発      行 : インターローカルジャーナル
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発  行  人 : 高松平藏 
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