2009-12-29(vol. 151) | |||||||||
─ イベントから見えるドイツ社会 |
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□□ 目次 □□ 【ニュース】地元の『科学資源』を浮き彫りに 【編集後記】ドイツ社会とイベント |
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【ニュース】 地元の『科学資源』を浮き彫りに ドイツ3都市で大規模イベント
この催しは今年10月24日の土曜日、夕方6時から翌日午前1時にかけて開催された。3都市内にある大学、研究機関、企業、工場などの門戸が一斉に開かれたもので、人々は10ユーロのチケットを購入すれば、どこにでも入ることができるというもの。昼間は子供を対象にしたプログラムも組まれている。 企画・実行は地元の文化専門の企業によるものだが、州や地元の銀行・企業からのスポンサリングも受けており、各市も応援している。 門戸を開く側は、単純にドアを開放するだけではない。技術の紹介や体験ができるように様々な趣向を凝らしており、さらに「イベント会場」である3都市内では巡回バスがまわる。開催時間内に全てを回るのは無理だが、それでも『地元にはこんなに科学があったのか』ということを十分に感じられる『インフォテインメント』だ。 エアランゲンはもともと大学の町であり、音声データ圧縮技術のMP3を開発したフラウンホーファー研究所をはじめ、ハイテク関係の研究所も多い。また10年ほど前から『医療都市』という戦略を立て、医療技術専門のビジネスインキュベーター(起業支援施設)などもある。ニュルンベルクやフュルトにしても、技術系の大学や新素材開発などの研究開発機関がそろっている。 地元の高学歴者に人気
今月4日には、開催パートナーも含めた最後の記者会見が行われた。この会見では同イベントに関する各種統計が発表された。高学歴の地元の市民がリピーターとしてこのイベントを楽しみにしている様子がうかがえる。 4回目の今回は2万5000人以上の訪問者数を数えた。2003年の初回は1万2000人。回を重ねるごとに訪問者数が増えてきている。 訪問者の構成をみると、男性と女性の比率はほぼ半々。年齢層は21‐30歳までの層が最も多い(28%)。以下41‐50歳(20%)、11‐20歳(19%)、31‐40(14%)と続く。
興味を持った分野も自然科学(67%)、技術(66%)、医療(42%)がトップ3を占め、訪問先も大学(61%)、企業の研究機関(21%)、研究機関(13%)という順番になっている。 近年、ドイツではイベント型の文化関係の取組みが増えているが、44%の訪問者がニュルンベルクで開催される夜型の文化イベント『ブルーナイト』にも訪問している。一方で41%は他のイベントに訪問はしておらず、『文化イベントファン』『科学の夜長ファン』の二つの層があることが見出せる。さらに、89%がもう一度『科学の夜長』に訪問したいと答えている。 同イベントは『科学』の地元資源を顕在化、そして地元の人によって認知される。さらに約70の新聞・雑誌が報じている。科学を軸にした同地域の存在感やアイデンティティが増幅されるかたちだ。(了) 【編集後記】 ドイツ社会とイベント ◆日本の場合、多くの人が大学へ進学するという傾向が戦後のある時期から強まった。子弟には自分よりもよい教育を受けさせたいという考えた人が多かったからだ。ある意味、階層移動がおきた。 ◆一方、ドイツでは『カエルの子はカエルに』という考え方が日本に比べて強いように思える。したがって、大学へ行く子弟の親もまた大卒という傾向が大きい。つまり階層移動が少なく、ドイツで大卒といえば、いくばくかエリートのにおいが今も残り、生活における趣向や、生活の質に対する要求も高い。近代の市民社会の中核をなした、いわゆる19世紀の『教養市民』の流れが見てとれる。 ◆もちろん、ドイツ社会も変化している。近年、自由主義経済が強くなり、文化もイベント型で消費型といってもよいようなものに人気が集まりつつある。『科学の夜長』がうけるのも、イベント型にしつらえたところにあるといえよう。 ◆見るべきところは、『科学の夜長』が現代に受ける『イベント型』であっても、訪問者の統計はドイツ社会に残るひとつの特徴が分かりやすくでるところだ。 ◆とりわけ、エアランゲンは大学の街であり、ホワイトカラーが多い街である。舞台になった3都市の中でもエアランゲンは特にそういう傾向が顕著に表れたといえる。このイベントからは、今も残るドイツ社会の特徴と変化が同居しているのが見出せる。(高松 平藏) |
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■■インターローカルニュース■■ 発 行 : インターローカルジャーナル http://www.interlocal.org/ 発 行 人 : 高松平藏 発 行 日 : 不定期 Copyright(C) Interlocal Journal |
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