2008-01-30(vol. 143) | |||||||
─ エアランゲン市 バライス市長インタビュー(後半) |
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ドイツ地方都市の舵取り、EUにらみ シーグフリード・バライス博士(エアランゲン市 市長) 本編に戻る 前半に戻る |
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というビジョン ■市長になる前は経済局の局長でした。医療分野のトップの都市をめざすというアイデアはこの時から持っていたのでしょうか。 『私が経済局長になったのは1988年。その翌年、ベルリンの壁が崩れますが、旧東ドイツで品物やサービスの需要が高まります。それを受けて、エアランゲンも景気がよかった。ところが、好景気に隠れて経済の構造的な欠陥が見えてこなかった』 『ほどなくして、景気も悪化していきます。93年には市内の労働市場が急速に減り、失業率が上がりました。エアランゲンに昔からあった大きな企業も倒産する始末です』 『そこで行ったのが調査です。企業の従業員の代表組織と一緒にエアランゲンの強みはどこか、どこに力を入れて職場を増やすべきかといったことを1993-95年にかけて研究しました。そして見えてきたのが、医療と健康に関して他の街にない強さでした』 ■なるほど。それから戦略として構想していったわけですか。 『いえいえ。街の強みがわかってきて、まずは大学と企業、とくに医療関係の分野でネットワークを作ろうとしました。しかし、まだこの時点では医療都市というビジョンはありませんでした』 『1996年に市長に選ばれました。当然市長として新しい市政方針が必要です。前市長の場合は環境問題をかかげ、自転車道の整備などを行い、「環境首都」に輝いています。環境問題はもちろん重要で、前市長の政策は引き継いでいますが、政治家としては、独自のものを出していかねばならない。そのときに医療関係に強い特長を思い出した。市長就任後のはじめてのスピーチに医療都市という言葉をいれました』 『スピーチを終えたあと、盟友である副市長がやってきて「勇気あるビジョンだ」とコメントしてくれました。その後、彼ともう一人のスタッフが中心となってこのビジョンをすこしづつ拡大してくれました』 ■市長就任から10年をこえました。医療都市という政策をどう評価していますか 『1999年と2005年の2回にわたり医療技術や健康をテーマにした年間モットーをかかげました。市民の健康のためにがんばることは大変喜ばしいことです。その結果、市民のあいだでは健康に対する意識が他の街の市民よりはるかに強い。今年の夏にはある調査で健康的な街として84の大都市のうち2位になった。1位はウルム市です。現在の目的はウルムをおいかけ、ウルムを越えることです』 『それから私は経済学出身なので職場数のことを最も気にします。そのへんでいうとメルケル首相が述べた「職場をつくることは、社会的なことである」という意見には同感です。現在エアランゲンではすばらしい記録がある。10万4000人の人口に対して9万の職場があります。そして新しくできた職場というのは医療関係が多い』
そして教育へ展開 ■今年は選挙の年になりますが、今後の方針は? 『健康に加え、子供と家族にやさしい街ということもすすめています。幼稚園・保育所を大きく拡大や、学校の休暇中に子供の面倒をみるプログラムの充実を図っています。2004年にはエアランゲンで「家族のための同盟」ができ、活発な活動をおこなっています』 『選挙後、もし当選すれば、この続きとして教育を軸に展開するつもりです。そもそも前市長の時代に、家庭環境の劣悪な子弟を対象にしたプログラムができ、そして継続しています。年間300万ユーロ投じています。当選後は子供だけでなく、あらゆる世代を対象に、教育を軸にした政策を展開するつもりです』 <取材メモ>時流を汲み取る政治家 バライス市長の一期目の目立った仕事は医療方面に特化した経済政策だ。これは経済局長時代の成果をうまく反映させることで、政治家としての特徴をアピールできた。 二期目をみると家族政策、そして教育に注力していこうとしている。いずれの政策も時流にのったものといえ、ある種のマーケティング能力に長けている政治家と映る。 それにしてもみるべきは地理感覚。ドイツ国内はもとより、EUの中でどういったポジションを獲得するか、ということを念頭におきながら市政を展開している。(了)
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■■インターローカルニュース■■ 発 行 : インターローカルジャーナル http://www.interlocal.org/ 発 行 人 : 高松平藏 発 行 日 : 不定期 Copyright(C) Interlocal Journal |
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