2007-12-20 (vol. 142) | ||||||||
─ 地域のかたちを提示するしかけ |
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□□ 目次 □□ 【インタビュー】『風刺のお笑い』ご当地芸人“K K K”の活躍 【ニュース】街の歴史上の事件をダンス作品化 【編集後記】地方分権が成り立つ秘密 |
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![]() 『風刺のお笑い』ご当地芸人“K K K”の活躍 カバレティスト クラウス・カール=クラウスさん
■ドイツは人材、施設、政策、メディアそして“お客”とあらゆる面で地方の文化が充実しています。それにしてもエアランゲンおよび周辺地域を指すフランケン地方でお客さんは十分ですか? 『フランケン地方ではカバレットに興味のある人がたくさんいますよ』 『私は他の地方でも舞台にたつことがあるのですが、面白いのはフランケンそのものに興味を持っている人がいますし、もちろん“フランケン人”も住んでいるのがわかる。まあこれは、ここ数年フランケン出身の2人のカバレティストが全国規模のメディアに出演するなどの活躍があることも影響していると思います』 ■エアランゲンでの舞台チケットも売り切れが早い。 『エアランゲンのカバレット専用劇場、フェフティ・フィフティでは年間12-14回程度、出演しています。もっとも、そうこうしているうちに隣町のフュルト市の舞台に立つことも増えました。年間26-30回出演している』 エアランゲンで “KKK”は 大切な存在です ■ 存在感は大きいですね 『フランケン地方全般では“KKK”の存在感はそれほどでもありません。なぜなら、フランケン地方とほぼだぶる“メトロポリタン地域 ニュルンベルク”を対象にカバレットを展開しているアーティストがたくさんいるからです』 『しかし私は年6回程度、テレビで“フランケンのカバレット”という番組の司会をしています。この仕事を通して、影響力を強める可能性はある』 ■エアランゲンではどうですか 『“KKK”は大切な存在です。毎年地ビール会社が行うビールのお祭りがあります。このときにエアランゲンのVIPが集まり、私も舞台に上がる。当然、皆さんは風刺のようなものを期待しています。しかし、(会場にいる本人たちが風刺対象になるため)もっと軽いものをほしがっている。「私を洗ってください。でも濡らさないでください」という感じですね』 地方を映し 方言で世界を笑う ■カール=クラウスさんにとってエアランゲンはどんな街ですか。 『エアランゲンは私にとっていくつかの魅力がある。まずは市街から自転車で5分も走ればどの方向でも緑がある。それからビール祭り。エアランゲンの“5番目の季節”で、世界でただひとつのものです』 『同市は人口10万人の都市ですが、グローバル企業のシーメンスと大学がある。おかげで、これほどの多くの外国語や方言が行きかう街は他にないのではないかと思います』 『エアランゲンはニューヨークのような碁盤の目に作られている。これは大昔にフランスから移ってきた人たちによるものですが、いすれにせよマンハッタンよりもはるかに早く作られた』 ■エアランゲンやフランケンでのカバレティストの役割は何だと思いますか。 『この地域のトレンドを映し出すのが仕事です。そしてもう一方で世界中の問題をフランケンの方言でお客さんに伝えるということですね』 <取材メモ>街のトリックスター トリックスターという言葉がある。『いたずら者』とか『詐欺師』といった意味である。人類学や神話学では権威や秩序といった既存の決まりごとを破るような性質の人物をさすが、これは文化的に英雄になるケースがある。わかりやすい例では将軍様をとんちで負かせてしまう『一休さん』などもトリックスターだ。 ひるがえって、『エアランゲンにとって“KKK”は大切です』というカール=クラウスさんの発言からは、『街のトリックスター』を自認しているように聞こえる。そういえば、中世の王侯貴族には道化師が仕えていた。彼らはもちろん芸人であったが、秩序の外にいるトリックスターの役割も果たしていた。道化師は王侯に無礼に話かけることが許され、王侯にとっては自分の姿を客観的にうつしてくれる役割も果たしていたのだろう。街のVIPをネタに風刺する“KKK”とだぶる。(了)
【関連記事】高松平藏 のノート『風刺お笑い〜カバレットとドイツ社会』 ![]() ![]() 街の歴史上の事件をダンス作品化 【フュルト】 ドイツ南部の都市、フュルト市(バイエルン州、人口約11万人)でこのほど街の歴史的な事件を作品化したダンス作品が上演された。
同市営劇場で11月29日に初演を迎えたダンス作品『マイム・マイム』はこんな歴史的事件を題材に作品化されたプロジェクトだ。 この作品にはイスラエル、セネガル、インド、中国、ポルトガル、日本など世界中から33人のダンサーが招聘され、地元のアーティスト、ユッタ・クツルダさんによって作品化された。 作品は33人のソロダンスが中心になったもので、各ダンサーが孤児の一人一人を象徴するかたちだ。 なお『マイム・マイム』は日本でもフォークダンスとしてその名が知られているが、もともとイスラエルの民謡で『水』を意味する。 ■街の記憶を芸術作品に ドイツの都市は自らのルーツや歴史を大切にしていく傾向が強いが、フュルト市の場合は『ユダヤ系市民の多かった街』という歴史をかなり意識的に市の文化プログラムに反映させている。 まずは10年ほど前にユダヤ・ミュージアムが開設している。このときは全国ニュースにもなった。 またクレッツマー(日本ではクレズマーと紹介されることが多い)という東欧系ユダヤ人がルーツの音楽があるが、毎年クレッツマー音楽フェスティバルを開催している。市営劇場でもユダヤ人にスポットをあてた作品が上演されている。 そして、なによりもこの市営劇場そのものが、100年ほど前にユダヤ系市民によって建設されたものだ。 また2007年は同市の1000年記念年の年で、この枠組みの中で『街の記憶』を舞台作品化されたのが今回の作品だが、今年のはじめには同市出身の首相や経済人を主人公にしたレビュー作品が上演されている。(了) ![]() 地方分権が成り立つ秘密 ◆街の記憶を作品化したのがフュルト市。こういう行為が街の存在やルーツを確認していく作業になっていきます。KKKこと、カール=クラウスさんは地方の方言を武器に世界を笑い、かつ地方を風刺で造形していきます。 ◆ドイツは連邦制で、いわば地方分権です。アートなど文化についても地方ごとにしっかりしている。これらを通して地方の特長が確認され、地方のかたちをはっきりさせていくのでしょう。地方分権が成り立つひとつの要といえるでしょう。 ◆そういえば、大阪の漫才にも関西人のメンタリティをネタにして形にするケースがあります。とりわけ私は海原やすよ・ともこ さんの大阪人のコミュニケーションの特長をうまく描き出していた漫才が印象にのこっています。大阪のお笑いを軸にしたイメージはメディアで拡大されすぎたところもありますし、上方の漫才に政治や社会を風刺するスタイルはちょっと難しい面があります。それにしても、上方漫才には大阪を造形しているような一面があるように思います。(高松 平藏) ![]() |
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■■インターローカルニュース■■ 発 行 : インターローカルジャーナル http://www.interlocal.org/ 発 行 人 : 高松平藏 発 行 日 : 不定期 Copyright(C) Interlocal Journal |
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