■■インターローカル ニュース
■■ Interlocal News  2005-08-26 (vol. 120)

 

─ 夏のオープン・ドア 前号次号

 

□□ 目次 □□
【ニュース】 社員のモチベーションにも一役/ウェーブライト社のオープン・ドア

【ニュース】 芸術と宗教の『オープン・ドア』/街の構造が盛り上げる
【編集後記】 直接話そう

メールマガジン
『インターローカル ニュース』の
無料配信をおこなっています。


お申し込みは
こちら



【ニュース】

社員のモチベーションにも一役

ウェーブライト社のオープン・ドア



 
ある日曜日の午後、エアランゲン市内のインキュベーター施設やベンチャー企業が集まるテンネンロヘ地区の一角に休日にもかかわらず人々が集まる。レーザー技術のウェーブライト社の『オープン・ドア』の日である。

 同社は 1996 年に同市で創業。美容や眼球治療のためのレーザーシステムの開発を行っており、現在アメリカやフランス、スペインなどにも拠点を持つ。 10 年足らずで急成長した企業だ。

 この日は敷地内でビールや軽食を楽しめるようにしたほか、子供向けに簡単な工作ができるようなコーナーをもうけた。また、同社のシステムによる角膜測定や野菜の表面をレーザーで焼く体験コーナーも用意された。

 同社IR(Investor Relations)部門のステファニー・チマーマンさんによると、『オープン・ドア」は同社のシステムや治療効果などについての技術や信頼性、クオリティを直接人々に伝えることができる機会だという。またレーザーシステムによる治療に興味のある人は医師へ直接訪ねることができるが、安全性や技術面で医師はそれほど深く教えることはできない。つまり『潜在的な“患者さん”に力を貸すかたちだ』。

 企業にとってオープン・ドアはマーケティングのひとつの手法であるわけだが、中心になってくるのは訪問者とのコミュニケーションにあると同氏はいう。『訪問者は社員のほかに経営者や管理職と直接話しをすることができる』。

 実際、企業の社会貢献や業務内容の紹介をするパネルが並び、映像資料が流される。しかし、必ずお揃いのポロシャツを着た数人の社員がいて、気軽に訪問してきた人と話をしている。

 オープン・ドアは訪問者だけでなく、社員に対してもいい機会だ。普段会わない人や、顔見知りでも話したことのない人と話す機会になる。また、日々デスクワークをこなしている社員でも、この日ばかりは多くの訪問者に対して会社についての説明やサービス精神を要求される。こうした『業務』をこなすことで会社に対して誇りが持つことができ、社員のモチベーションを高める機会になっている。

 この日の訪問者は 300 人以上、家族連れも多い。ここ3年ほぼ同じ数だが増加傾向にあるという。(了)
レーザーで野菜の表面を焼く(上)
焼いたあとの野菜(下)

角膜の測定。

直接のコミュニケーションが最大の魅力






【ニュース】
芸術と宗教の『オープン・ドア』
街の構造が盛り上げる




 
今年の夏も頻繁に『オープン・ドア・デー』が行われた。中でもエアランゲン市街にある施設・組織が連携しておこなう例があった。

 ひとつはある日曜日、市内のギャラリー 10 数軒が共同で行ったもの。小売店などと軒を並べているギャラリーがけっこうあるが、日曜日のドイツは法律で店舗が閉まっている。それだけに人だかりが目立つ。中にはワインやちょっとした軽食を用意しているところがあり、ギャラリー内の作品をサカナに人々の会話がはずむ。
アートと会話が楽しい日曜日

 反対に物静かな『オープン・ドア』もあった。市街の 5 つの教会が土曜日の午後 7 時 50 分に一斉に鐘がつかれた。各教会ではオルガンや合唱など、教会音楽が演奏される。

 大通りには週末の夜を友人たちと楽しむ若者たちがうろうろしているが、そんな中を明らかに教会を巡回している老夫婦などがちらほら。そっと教会の中に吸い込まれていく。翌日の日曜日は街の中心にある広場でミサが行われた。

「オープン、教会」、市街の中心にある教会

音楽の演奏が人々の心にしみこんでくる

 ギャラリーも教会も共同でドアを開くということ自体、一種のお祭りで人をわくわくさせるが、エアランゲンの場合をみると、街の小ささがオープン・ドアイベントを余計に楽しいものにしているといえそうだ。

 エアランゲンの人口は約 10 万人。同市はこれといった観光スポットもなく、どちらかといえば、大学とホワイトカラーの街といった特徴があり、落ち着いた雰囲気がある。

 市街にはメイン道路に沿って市役所から飲食店、銀行、公園、ミュージアム、小売店とありとあらゆるものがある。そのメイン道路も大人の足で 15 分程度で端から端まで歩けそうな距離だ。しかもそのほとんどが歩行者天国になっている。歩いて楽しめる典型的なコンパクト・シティであり、そんな中に芸術と教会の拠点が数多くあることがわかる。また、こうした街の小ささが「オープン・ドア」を散歩感覚で楽しめることにつながっている。(了)






【編集後記】 
直接話そう



◆オープン・ドアは人々が主催側と直接話ができる機会です。以前ドイツを紹介する本でドイツ人は直接的な情報を好むといったことが書いてあるのを読んだことがあるのですが、そういった傾向があるからこそオープン・ドアが成り立つのかもしれません。

◆オープン・ドアのみならず、夏場はサマー・フェスティバルのかたちをとった催しもたくさんあります。私もいくつかのぞいてみたものですが、印象的だったのはわが家の近くの芝生が広がる広場で行われたSPD(ドイツ社民党)のサマー・フェスティバル。子供が遊べるようなスポーツ遊具をスポーツ系の非営利法人が用意したり、ビールやソーセージなどを楽しめます。

◆SPDの党員でなくとも自由に訪ねることができるのですが、前市長や市会議員たちもベンチに座って、ビールを楽しんでいる姿があります。バンドが演奏したり(なぜか60年代、70年代のロックが多かった)、さらにはどういうわけか近所のテコンドー教室のメンバーによるデモンストレーションなどなど。子供連れでも十分楽しめるものでした。もちろん党関係のチラシを入手することができますし、党の要人とも話しはできます。政党といっても日本にくらべて身近な存在に感じます。

◆毎年のことながら、夏場は子供の夏休みと重なるため、前回の発行から2ヶ月ほどたってしまいました。この週末は友人の兄弟の結婚式前のパーティ。自動車で2時間ぐらいの街であるのですがとまりがけで遊びに行きます。皆様もよい週末を!(高松 平藏)

■■インターローカルニュース■■

発      行 : インターローカルジャーナル
http://www.interlocal.org/  
発  行  人 : 高松平藏 
発  行  日 : 不定期

    Copyright(C)  Interlocal Journal

 

引用、転載の場合「高松 平藏」が執筆したこと、または「インターローカル ニュース」からのものとわかるようにしてください

|インターローカルニュースtop | 記事一覧 |