■■インターローカル ニュース
■■ Interlocal News  2005-05-31 (vol. 117)

 

─情報・伝達・文化 前号次号

 

□□ 目次 □□
【ニュース】 We are info“team” !

【ニュース】 日独交流、地域の中に国がある
【編集後記】 情報・伝達・文化

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【ニュース】

We are info“team” !



 『各フロアにコーヒーメーカーがあるんですよ』
 というのは IT 企業 infoteam Software の創業者の 1 人カール-ハインツ・ヨーンさん(常務取締役)
(=写真)。ネット全盛の時代、社内で顔が見えるコミュニケーションを重視した経営を行っている。

 バイエルン州北部の街に本拠地をおく同社の創業は 1983 年。この分野の企業としては老舗だ。欧州はじめアメリカや中国などにもネットワークを広げつつ、ソフトウエアやオートメーション関連で地元企業との協力関係をつくっているリーダー格の企業だ。

 具体的には定期的に社員全員が集まって目標や計画、会社全体の動きを共有する。社員が会社に対して業務改善のための提案もできる。提案については取締役会で検討して取り上げる。取り上げなかった場合もその理由をきちんと説明する。あるいは誰でも書き込みができる電子社内新聞を発行している。

 また毎朝10時には短いコーヒータイムをもうけている。この時は社員同士誰もが話しをすることができる。ドイツの人々にとって大切な休暇や誕生日などの個人的な話にも花が咲く。

 こうした取り組みは昨年新規に雇用した社員から提案された。プロジェクトやチームの情報が共有化できていなかったからだ。『information とは仕事のゴールや計画、そして社員の担当や責任を明確に伝えること。それに対してcommunication は同僚の問題を解決するためのものです。技術的なこともあるし、気持ちの問題もある。コーヒーやお茶はコミュニケーションのためのインフラです』。

 一般にドイツ企業は日本企業に比べると資格に基づいた職能主義の組織という傾向が強い。秘書でさえも資格が必要だ。また日本企業のようにアフター5に一杯飲みに行くということはない。当然のことながら企業文化は異なる。しかしヨーンさんから見ると『日本はコミュニケーション・マイスターでは?』と笑う。

 昨年雇用したのは 10 人。社員数は 57 人になった。『今の方式は80-90人まで。それ以上増えると別の方法を考えなければいけない』(同氏)。それにしても会社はチームにならなければ強くならないとヨーンさんは強調する。『全メンバーが会社全体の動きに何かのかたちで参加しなければならない。だから、われわれはInfo“team”なんですよ』。(了)
(ドイツ在住ジャーナリスト/高松 平藏)

(『週刊京都経済』2005年3月21日付 掲載分)
(ドイツ在住ジャーナリスト/高松 平藏)






【ニュース】
日独交流、地域の中に国がある



劇団の交流は15年前がきっかけ。長年の交流が今回のプロジェクトにつながった。

 『君たちはキナ( China/中国)から来たのか?』とドイツ語で日本人女性に問うドイツ人警官。

 『え、私たち、きな臭く(あやしく)ないですよ』と日本語で嫌疑を晴らそうとする日本人女性。お互いの言葉がわからず、ちぐはぐなやり取りが続く。

 これは今年 2 月ニュルンベルグ市内で上演された音楽劇『パンとご飯(Brot mit Reis)』の一幕。ニュルンベルグの劇団『 thevo(テーフォー)』と東京の劇団“仲間”が中心に行っている『手(Hand)』という日独の文化交流プロジェクトの一環だ。両劇団は青少年向けの活動を長年続けている。

 プロジェクトそのものは昨年からおこなわれており、2006年まで続く。その間、日独でワークショップや公演が行われる。今回もニュルンベルグで音楽劇の上演以外にも日本文化の紹介や幼稚園で日本の手遊びを行なうといったことも行われた。

 音楽劇のテーマは日本人から見たドイツ。『仲間』の松野方子さんらが上演の約2週間前にドイツへ渡り、現地のスタッフと作品化していった。昨年 8 月にも来日したドイツ・スタッフと同様の作品を日本で上演したが、このときは『ドイツから見た日本』というテーマだった。

 創作方法は、松野さんたちがドイツの滞在中に体験したことや感じたことを織り交ぜ、インプロビゼーション(即興)を重ねる。そこから thevo のクラウス・マイヤーさんが作品として構成していくという方法だった。

 出来上がった作品は、誤解やすれ違いの中で、ある時お互い意思の疎通がかなうといった会話の面白さに加え、日本やドイツの歌や日舞をもとに創作された舞踊などが登場するバラエティ豊かなものになった。

 一方ドイツ語の台詞ではニュルンベルグ周辺をさす『フランケン地方』の方言や特色が良く出ているものだった。観客もほとんどが地元の人たちだ。客席からはしばしば笑い声が聞かれた。自分たちの地方色が出るあたりを面白く見ていたかたちだ。

 出演者の1人でもあるマイヤーさんは『典型的なドイツといっても実は具体的には何かわからないようなところがある』という。結局は自分の住む地域の中にドイツがあるというわけだ。日独の共同プロジェクトと銘打たれているが、生身の人間が相互の文化を意識してぶつかるとき、実は東京とニュルンベルグの文化ということが同作品から浮かび上がってくる。(了)
(ドイツ在住ジャーナリスト/高松 平藏)

(『週刊京都経済』2005年3月28日付 掲載分)






【編集後記】 
情報・伝達・文化


◆上の記事に登場する infoteam のヨーンさんは<information>と<communication>を明確にわけて考えています。したがって『ネットでは本当の communication はできない』というのが同氏の持論。同社はドイツ国外にも広くネットワークを築いている会社ですが、研究開発型のより付加価値の高い事業に関しては顔が見える関係の会社、つまり地元の企業とのネットワークに注力しているのもうなずけます。

◆記憶が曖昧なのですが、アスキーの創業者、西和彦氏が同社代表取締役を解任されたころ、ある雑誌のインタビューに『情報の「情」にこだわりすぎた』といったような反省の弁を話しているのを読んだことがあります。なるほど、Information の翻訳である『情報』 には communication の意味も含まれているということになります。これが日本の IT なんでしょうか。

◆日本国外に住んでいると、日本人ということをいやおうなく意識させられますが、ドイツ人の友人たちを招いて、日本食をつくって振舞う際も結局、私の母の味付けがベース。厳密にいえば関西食。身についている日本とは関西であります。

◆ときおりドイツの友人たちに日本文化のレクチャーをすることになりますが、これまた体験の伴う場合は生まれ育った関西文化が根底にくっついています。日本文化の「情報」も私を経由すれば関西がついてまわるというわけです。最近、ドイツの友人たちにもつまらないダジャレを言ってしまうのは関西式コミュニケーションか?それとも『オヤジ度』があがったのか? communication の語源はラテン語で『他人と共に持ち合う』というところあるそうですが、笑いを分かち合えれば、まあいいか。

◆別に発行しているメルマガ、『ドイツ発 わが輩は主夫である』に詳しく書いたのですが、このたび引越しました。といっても階下へ移っただけで住所は同じです。間取りは以前と同じなのですが機能別の部屋割りをしました。すなわち、家族の書籍類や仕事用、勉強用のデスクを一部屋にまとめてしまいました。3人いる子供たちは一番上でまだ小学生なのですが、わが家の場合、パソコンを使う機会や調べモノをすることもあり、それが家族の団欒と結びついていることがけっこうあります。そこで、『インテリジェント・ルーム』を作ることにした次第。さて家庭内の<information>と<communication>にどう影響するか、ちょっとした実験であります。 (高松 平藏)

  ドイツ発 わが輩は主夫である 【その20】バックナンバー
  http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000138289
  (2005年5月30日発行分)


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発      行 : インターローカルジャーナル
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発  行  人 : 高松平藏 
発  行  日 : 不定期

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