■■インターローカル ニュース |
|||||
|
─学力低下! | ≪前号|次号≫ | |||
|
□□ 目次 □□ |
|
|||
|
|||||
【短信】 パリ市、自転車専門道路整備に 400万ユーロ投資 【emex特約】 パリ市は、市内で自転車を利用する人が 3 年前と比べて 50 %増加したことを発表した。 この傾向から、パリ市は 400 万ユーロ(約 5.56 億円)を投入して 6.4 キロの新しい自転車専門道路(Pistes cyclables)を整備する。 現在パリ市内には、350 キロの自転車専門道路がある。(了) 2005年2月28日付 『emex (europe multimedia express)』より転載 【ニュース】 学力低下と人生の達成感 OECD (経済協力開発機構)による PISA (生徒の学習到達度調査)の 2003 年の結果が 2004 年 12 月に発表された。これは OECD 加盟国の 15 歳を対象に数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシーの 3 分野を調査するものだ。 2000 年の結果が発表されたときは、そのランキングからドイツの学力低下が問題視され、マスコミでは『 PISA ショック』という言葉が踊った。OECD 教育局指標分析課長であるアンドレアス・シュライヒャー氏自身、実はドイツ人。『予想に反して悪い結果で驚いた』と当時、独国内の新聞のインタビューで答えているほか、ドイツ語の読めない外国人が増えたからだという分析や SPD (ドイツ社会民主党)が与党になっている州のレベルが低いといった指摘まで出ていた。ここまでくると分析というより混乱だ。 今回も PISA 関連の報道が多くなされた。学習意欲や能力が極端にない『危機的生徒』が 22 %におよぶ。上位と下位の分布が極端なのもドイツの特徴だ。今回は前回に比べて数学はすこし上がったが、総合的なレベルは平均程度でトップクラスとはいえない。『やはり、よくなかった』と、ため息のような論調の報道が目につく。 あるいは、国語力については『自分たちの時にくらべると程度が低い』( 8 歳の児童の母親、フュルト市)という実感や、昔に比べて口語的な文章しか書けなくなっているという教諭の指摘もある(エアランゲン市)。 しかしながら、実はドイツの学力が低いという議論は今に始まったことではない。60年代に欧州内でドイツの教育レベルが低く、優秀な学者は外へ出てしまうといったことが明らかになる。1964 年にはある雑誌に『惨憺たるドイツ教育』という記事が掲載され、本にまでなった。これを受けるかたちで翌年には国家レベルでドイツ教育委員会がつくられた。同委員会は75年に発展的解消がなされるが、他にも国家レベルで改革プロジェクトが組まれるといった動きが断続的にある。 それから今回、大学進学者の親もほとんどが最高学歴を持つ傾向があるということも発表された。しかし 60 年ごろの調査でもフランスやイギリスの大学進学者の 25 %が労働者層の出身だったがドイツは 8 %。昔から階層移動の少ない社会だが、その裏返しで職業意識が強く、親と同じ階層にいながら十分に達成感のある人生が送れた。 ところが近年、職業意識の低下や一般教育を重視する風潮は大きくなってきている。これまでの社会構造がくずれてきたことが PISA ショックという形で噴出したという面もありそうだ。 【メモ】 国が目指す方向と教育 日本でも PISA の結果をうけて学力の低下が問題になっていたが、時間を遡ってみるとドイツとの違いは大きい。 まず明治維新以降、国家の近代化をいそぐため、若きエリートを活用した。東大はそんな人材の供給源だったといえよう。 戦後は親が大学を卒業していなくとも、子供には大学に進学させる、というケースが増えた。いわば、階層移動が激しくなった。そんな日本を底で支えた言葉にこんなものがあった。『末は博士か大臣か』『立身出世』。階層移動の少ないドイツとはずいぶん異なる。 そんな両国が今、学力低下という共通の問題を抱えている。日本の場合は個人の立身出世を実現してきた企業そのものが変化したこと、それから教育の市場化により、受ける教育の水準が個人によってばらつきが大きくなってきたことなどが背景にあるのではないか。 日本もドイツも成熟した国だ。経済の競争力という点では両国とも今後目指すべきは先端技術やデザインといった付加価値の高い部分を磨く必要がある。日本に関していえばこうした競争力に加え、経済復興と成長の一辺倒で見過ごしてきたもの、たとえば生活の質を持続的に向上維持していけるような考え方も必要だ。 『米百俵』を盛んにアピールしたのは首相に就任したころの小泉首相だが、目指すべき方向性がある程度見えている中で、教育のあり方ときちんとつながっていくような方法論が大切だ。これは日独両方にいえることだと思う。(了) (ドイツ在住ジャーナリスト/高松 平藏) 2005年1月10日付 『週刊京都経済』掲載分に加筆 【編集後記】 大人が共有すべきこと ◆お笑いもお酒もその土地や国が持つ文化がよく見えてくるものの 1 つです。エアランゲンで地ビールを普段飲む生活をしていると、全国をターゲットにマーケティング戦略が盛んに語られる日本のビール業界が少々しらけて見えてくるというのが正直なところです。それにしても、友人の娘さんが昨年、日本に 短期滞在。居酒屋が楽しかったとか。 ◆日本におけるビールの歴史もすでに 100 年以上になります。普及のしかたといえば『舶来酒』が東京から地方へという順序で広がったのですが、鉄道網の整備や軍隊がその一端を担ったようです。まさに近代化の過程で普及したといえます。一方、1990年代末からの地ビールブームは『舶来酒』から地酒化する段階にはいったといえるのかもしれません。苦戦しているところは多いようですが、30年後、50年後、どんなふうになっているか。期待したいところです。 ◆先週から今週にかけてドイツはファッシング(カーニバル)の時期です。この時期、仮装をしたり、どんちゃん騒ぎをするときです。ファッシングのイベントが 各地でおこなわれますが、そこで道化が出てきて、風刺の含んだ笑いをいうわけです。『昔はロビンフット(政府)は金持ちから金をとった。今は(財政難から)貧乏人からカネをとる』『シュレーダー首相は昨年、ロシア人の 3 歳の女児を養子にした。子供をつくる仕事まで他人まかせだ』などなど。 ◆日本ではこの手のお笑いは少ないですが、私が思い出すのが人生幸朗さんのぼやき漫才。その師匠の都家(みやこや)文雄さんはより批 判精神旺盛だったことから戦時中、何度も警察に拘引されたとか。 ◆日本で批判精神が発揮されるのは川柳にあるのかもしれません。川柳コンクールなどをみると、日常の中での『ぼやき』が多いですが、中には政策に対 する批判を込めたものもけっこうあるようです。(高松 平藏) |
|||||
■■インターローカルニュース■■ 発 行 : インターローカルジャーナル http://www.interlocal.org/ 発 行 人 : 高松平藏 発 行 日 : 不定期 Copyright(C) Interlocal Journal |
|||||
|
★引用、転載の場合「高松 平藏」が執筆したこと、または「インターローカル ニュース」からのものとわかるようにしてください | ||||
|インターローカルニュースtop | 記事一覧 | |