■■インターローカル ニュース
■■ Interlocal News  2005-01-18 (vol. 111)

 

─エネルギー技術の転換 前号次号

 

□□ 目次 □□
【ニュース】 10万人都市の天然ガス・スタンド

【ニュース】 温暖化防止、地域から
【編集後記】 スタンダード技術

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【ニュース】
10万人都市の天然ガス・スタンド


同市インフラ会社取締役のボルフガング・ゲウス氏(左)と、自動車にガスを注入するゲルド・ローバッサー副市長(右)。

 ドイツ南部の地方都市エアランゲン(バイエルン州、人口 10 万人)のガソリンスタンドで天然ガスの供給をこのほど開始した。同市内では初めての天然ガス供給所になる。アウトバーンの出入り口に近く、市内の中心地を走る幹線道路に面している。立地のよさに期待がかかる。

 エアランゲン市内南東部にある ESSO ガソリンスタンドで昨年 9 月から天然ガスの供給をはじめた。電気やガス、水道などを扱うインフラ会社『エアランガー・シュタットベルケ』と地元のガス会社、同ガソリンスタンドのオーナー、そして ESSO ドイッチェランド有限会社の協力によって実現した。

 ESSO社のナタリー・コープスさん(販売部長)によると、現在ドイツ国内には天然ガスを供給できるガソリンスタンドが 415 あり、そのうち 58 カ所が同社のブランドで販売しているスタンドだという。欧州ではイタリアに次いで 2 番目に多い。また IANGV (International Association for Natural Gas Vehicles)によると 2003 年 12 月の段階でドイツでは 19,400 台の天然ガス車が走っているという。ちなみに日本は約 18,500 台とほぼ同程度。

 さて化石燃料の枯渇、環境問題などエネルギーをめぐる課題は多い。これに対して自動車の動力源に太陽エネルギーや燃料電池、水素などクリーンで将来にわたり継続的に使えるエネルギーの開発が進んでいる。しかし『まだまだ(実用には)時間がかかる』(同氏)。 

 そんな中、天然ガスは有効だ。技術がある程度完成していて、安全。またすでに通常の自動車と同様に販売されている。加えて、ガソリン車やディーゼル車にくらべると二酸化炭素や一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物といった排気物の量が少ない。埋蔵量も石油よりも60年は長く持つといわれている。他方天然ガスに対する税金はガソリンに対する課税の 20 %。利用者にとって経済的にも魅力はある。

 ただ、現在市場に投入されている天然ガス車は通常の車輌に比べて高価だ。しかもドイツ全国で 1,000 件余りの天然ガス・スタンドが計画されているものの、交通インフラとしてはまだまだ不十分だ。これに対してESSO社は、天然ガス車は自動車市場の一部を担うと考えているが、決して既存のガソリン車の代用ではなく、自治体公用車やバス、タクシー、宅配トラックなど移動範囲の決まった自動車に適しているとしている。

 用途に応じた車輌とエネルギーを使う段階に入った。(了)
(ドイツ在住ジャーナリスト/高松 平藏)

2004年9月27日付 『週刊京都経済』掲載分
※記事にある数字は執筆当時のものです。








【ニュース】
温暖化防止、地域から


 ドイツの地方都市、エアランゲン市(人口10万人、バイエルン州)でこのほど、地域の温暖化防止のための課題 “AGENDA21” に取り組む団体の活動を紹介する機会がもうけられた。

 これは 10 月 26 日の夜 8 時から同市の市役所の議会場で行われたもので、市長のバライス博士はじめ、市会議員、NPOなど約 60 人が集まった。『AGENDA21ニュルンベルグ地域事務所』のペトラ・バイアーさんやエアランゲン市の『環境保全とエネルギー問題』局のハンス-ユルゲン・セーベルガー博士ら 4 人がそれぞれの活動を紹介した。

 『いろんなイベントを考えて、行っている』と AGENDA21 の地域グループとの取り組み紹介したのが同市と隣接するニュルンベルグ市環境局のヴェルナー・エベルトさん。『イベントには失敗したものもあるが、省エネ型ハウスに関する技術など環境保全につながるアイデアのコンクールはかなり成功した』と報告した。

『今、AGENDA21のグループの活動は減速中』と述べたのはエアランゲン周辺地域をさす『中央フランケン地方』の環境担当者ヴォルフ-ディーター・ウーヴァーリュックさんだ。

 同氏によるとバイエルン州では 30% の市と 67% の郡部に AGENDA21 と関連する組織があるという。しかしながら環境問題に対する人々の関心も失われていく傾向にあり、重要なキーワードである“持続可能性”という言葉を伝えていくことが難しいという。そんなことを背景に『(AGENDA21に対する行動は)ゆっくりしか進まないことがある。そんなスローペースの現状に対しても、待つという能力を持つことが難しい』と同氏は指摘。さらに『ひとつのことをはじめたあと、そのプロセスに対して反省する時間が必要だ』と述べた。

 地球の温暖化防止は21世紀の人類共通のテーマ。ところが政治や経済とも深く関わることから問題は複雑だ。一方、自治体単位での取り組みが増えれば全体として効果があがる、という側面もある。エアランゲンの場合、電気の消費量は増加気味だが、既存の建物に断熱材を追加したり、新築の際は省エネ型にするなどの対応が奏功して暖房に関するエネルギーは減っている。その結果、昨年はCO2の排出量が3-5%減った。

同市では地元の銀行やインフラ会社、建築会社、外国人議会など 24 の団体でAGENDA21に取り組む委員会をつくっているが、バライス市長はその座長を務めている。(了)
(ドイツ在住ジャーナリスト/高松 平藏)


2004年11月8日付 『週刊京都経済』掲載分
※記事にある数字は執筆当時のものです。





【編集後記】 
スタンダード技術


◆1980年代に Y.M.O.というテクノバンドがありました。坂本龍一さんなどがいたバンドです。このY.M.O.が流行したのは、私が小学校の高学年から中学生にかけてのころ。当時『ピコピコ・ミュージック』などと非難される側面もありましたが、いかにもコンピュータという音色がかっこよく響きました。

◆しかし、何で聴いてていたかといえば、レコード。私などはレンタル・レコードでかりてきたものをカセットテープにダビングしてウォークマンで聞いていたものです。『テクノ』というわりには、聴く道具はアナログでした。ところが今はアコースティックの楽器で演奏されたものでも聴く道具はデジタルです。音声データ圧縮の技術の MP3 が普及してからは本当に小さなプレーヤーで、音楽メディアの技術のスタンダードはがらりと変わってしまいました。

◆エネルギーに関しては、持続可能な技術がスタンダードになりつつあります。以前、週刊京都経済の編集長・築地達郎さんが、原子力発電も 19 世紀の蒸気をつかった技術だと喝破されていましたが、今、エネルギーに関して言えば、レコードから MP3 に転換するぐらいの変化が起こっているといえます。

◆音楽の視聴に関しては市場原理があります。企業も商品開発を必死にしますし、成熟した消費者にとって何で聞くかということはファッションという側面もあります。ではエネルギー技術についてはどうするか。生活インフラとして開発されてきた経緯があることから、そう簡単に変更はできません。そこで有効なのが地域単位で考えるということでしょう。地域社会とは大きくもなく小さくもない機構で、インフラのスタンダードを変える力を持っているのではないでしょうか。

◆さて、私のパソコンには 2,3 年前から Y.M.O.のリミックスバージョンの楽曲が MP3 ファイルになって入っています。中年男のテクノ・ナツメロも 20 年を経てようやく本当にデジタルになり、悦に入っています。いや、お恥ずかしい。(^-^;)(高松 平藏)


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発  行  人 : 高松平藏 
発  行  日 : 不定期

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