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─“メディカル・シティ”、エアランゲン | ≪前号|次号≫ | ||||
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【シリーズ】“メディカル・シティ”、エアランゲン(1) こんにちはシーメンスの皆さん ドイツ・エアランゲン市(バイエルン州)は 10 万人の 小都市だが、数年前から医療関連の産業育成を行っている。 この夏のメディカル・シティの動きをレポートする。
昨年から本格稼動しはじめた医療ベンチャー企業のインキュベーター、IZMP (das Innovationszentrum fuer Medizintechnik und Pharma in Erlangen)で7月のある金曜日、夕方から行われた入居企業のプレゼンテーションの一幕だ。対象は『シーメンスアーナ』。シーメンス社の社員を指す。 IZMP には 19 社の医療技術のベンチャー企業が入居しており、入居会社のコンサルティングやマーケティングを行っているマティアス・ヒーゲルさん( IZMP 業務執行者、責任者に相当)によると、『シーメンスとの接点をどう作ればいいかということが何回も入居企業から出ていた』。そこで、夏祭りの形態で行ったのが『Siemens meets IZMP』だった。この日は 9 社が 10 分づつプレゼンテーションを行った。 ところで、同市では 1996 年に市長のシーグフリード・バライス博士がメディカル・シティを目指すビジョンを打ち出した。IZMP はそんな戦略の中核だ。もともと同市は大学の街でもあり、医療関係の研究所や、大学病院なども多い。そこへグローバル企業のシーメンスの一拠点ということが加わる。人口 10 万人のうち約 21,500 人が同社で働いているというから、その存在は大きい。 加えて近年、シーメンス社は医療分野に力をいれており、事業に対する投資金額の比率も 11 %( 2002 度)から 13 %( 2003 年度)に増加。同分野に 31,000 人が従事しているが、内 5,000 人がエアランゲンと隣接するフォルヒハイムに集中する。もう 1 人の IZMP 業務執行者(責任者に相当)コンラード・ベウゲルさんは『エアランゲン市にはシーメンスがあるからこそ、IZMP に会社が入居してくる』と指摘する。 一方、IZMP のベンチャー企業は大学からのスピンアウト組も多く、技術力は高い。ドイツで金曜日といえば午後 3 時をすぎるとオフィスは閑散となるものだが、この日は約 20 人の『シーメンスアーナ』がきた。(了) (『週刊京都経済』 2004年7月26日付に掲載) 【シリーズ】“メディカル・シティ”、エアランゲン(2) ハェスラー教授の起業物語 市内の医療ベンチャーに特化したインキュベーター施設、IZMP に入居する3D-Shape GmbH (有限会社)に迫ってみた。同市の起業環境がうかびあがる。 社名があらわすように、同社の商品は非接触の光学三次元計測技術を応用した測定機器。立体物のスキャナーと考えるとわかりやすい。メートル単位のものからミクロン単位のものまで計測が可能で、特に高精度の測定技術については特許がある。 力をいれている医療方面では歯の測定などに応用ができるほか、非接触という特長を生かして、歴史的な彫刻の測定などもできる。実際の製品は電機関係の工場も多い隣接するニュルンベルグの会社とパートナーシップを結んで製造してもらう。 同社を立ち上げたのはエアランゲン大学教授、ゲルド・ハェスラー博士(=写真)。ベルリンで光学技術について学び、74 年から同大学に。情報光学に取り組み、三次元計測センサーを開発。 以前から研究費用の調達を通じて産業界ともよい関係ができていたため、『その人脈を通じてすぐに売れた』(同教授)。ちなみに同氏は日本の学会などに出席することも多い。この夏は関西方面にも足をのばした。 さて、この技術に市場性を感じたハェスラー教授は会社を作りたいと考えたが、パートナー探しが難しい。結局同教授のもとで博士論文を書いた『教え子』たちと 3年前に起業した。 大学に所属していることから教授自身は顧問のような立場に収まったが、学内での研究を通じてできたノウハウや計測プログラムを会社に投入することに対して大学は黙認した。無言の支援だった。 メディカル・シティの中核を担うIZMPに入居したのは昨年 1 月。それ以前はシーメンスの社屋をつかっていた。ちなみにエアランゲン市は同社の一拠点だ。創業時は同業他社と組むか、別のインキュベーターに入居するかといった逡巡があったが、3D-Shape の社長と IZMP の運営会社とに『コネ』があった。当時はまだ IZMP の建物はまだできていなかったが、シーメンス社の古い社屋を使うことを提案された。値段と設備がよかったので使った。 ところで今年 3 月に IZMP で行われた記者会見で『大学と企業の距離が短いのがエアランゲンの特長だ』とバライス市長は話した。10 万人の小都市に濃密な産学の集積が起業環境につながっている。(了) (ドイツ在住ジャーナリスト/高松 平藏) (『週刊京都経済』 2004年8月2日付に掲載) 【編集後記】 中国をめぐるはなし ◆先月、ディズニーランドのお城のモデルにもなったノイシュヴァンシュタイン城へ行く機会がありました。99 年に一度いったことがあるのですが、当時はドイツ語、英語、そして日本語の案内ボードがついていました。今回行くとびっくり。ポーランドや中国語の案内ボードやガイドブックが並んでいます。山の上のほうにある城まで行くのに、馬車に乗りました。乗客は15人程度。明らかにドイツ人とわかるのは妻と御者のおじさんだけ。あとは言葉から察するところ中国からの観光客でした。EU統合、中国の経済興隆といった世界情勢がストレートに反映されていました。 ◆すこし前のことですが、エアランゲン市内のギャラリーで行われたパーティで中国とドイツのビジネス関係のコーディネートをしているという中国人女性と話をする機会がありました。日本人とも仕事で顔をあわせることもけっこうあるそうです。そんなわけで言葉と思考の話になりました。同じアジアでも中国人のほうがドイツ的な思考になじみやすいのではという意見で一致したところ、彼女は続けました『そういえば、日本人はMaybe(たぶん)と言う単語を多用しますね』。『そりゃそうです。私もそうですが、彼らはたぶん、日本人だからでしょう』とかえす私。 ◆気になるのがメイド・イン・チャイナの製品の質。日本でも数多くありますが、我が家にある子供のおもちゃ、どういうわけか日本の市場向けにつくられたメイド・イン・チャイナのほうががっしりしているように思えます。ドイツで購入した中国製のおもちゃのもろいこと。製品設計をどちらの企業で担当しているかのちがいなのでしょうか ? ◆中国語も勉強した妻。長年使うことがなかったので忘れていたようですが、昨年台湾に住む友人が遊びにきたことを機にすこし復活したようです。そんなわけでノイシュヴァンシュタイン城への馬車での道すがら、彼女は中国の観光客と話しておりました。 ◆突然、妻の隣にいた中国人女性が私の顔をみて、にこり。妻によると『日本で女性は夫のいうことをきかなければならないときいていますが、よく結婚しましたね』という質問をされたとか。へえ、そういうイメージがまだ健在なんだな、と思いました。あ、ところで妻はその質問になんて答えたんだろう。。。。(高松 平藏) |
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■■インターローカルニュース■■ 発 行 : インターローカルジャーナル http://www.interlocal.org/ 発 行 人 : 高松平藏 発 行 日 : 不定期 Copyright(C) Interlocal Journal |
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