■■インターローカル ニュース
■■ Interlocal News 2004-08-26 (vol. 103)

 

─地域内循環2題 文化と経済とゴミ 前号次号

 

□□ 目次 □□
【ニュース】 “堆肥工場”を見せます 有機ゴミの地産地消

【ニュース】 市営劇場を福引きでサポート
【編集後記】 循  環

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【ニュース】
“堆肥工場”を見せます 有機ゴミの地産地消

この日は公園のようにしつらえられた
 ドイツでゴミの分別処理が早くから行われていることはよく知られているが、その中に有機ゴミの収集、堆肥化という処理方法もある。

 ドイツ南部のエアランゲン市にも有機ゴミを扱う『コンポストセンター』があり、一般の人に施設を開放するオープンドア・イベントが 5 月のある土曜日に行われた。

 施設には市内の有機ゴミが集められる。また、個人が庭木の剪定などで出てくる木の枝なども持ち込むこともできる。

 そして粉砕と攪拌(かくはん)を行い微生物の力で堆肥化され、でき上がった堆肥を販売している。年間およそ 6,750 t の有機ゴミが集まり、3,200 t の堆肥を『生産』。ゴミ処理場というよりも堆肥工場といったほうがぴったりくる。

 普段は 1.3 ha の敷地内いっぱいに堆肥化のレベルに応じた山が作られているが、この日は山の数は減らされ、軽食を食べたりビールが飲めるコーナーや木皮のチップを敷きつめてブランコやすべり台が設置された。ほかにもセンター内の重機を利用したゲームなども用意された。また堆肥化の作業経過を説明したパネルが作られ、木の粉砕作業のデモンストレーションなども行われた。親子連れで楽しめ、かつ同センターのことを学習・理解できる仕掛けだ。

 センターの管轄になる『廃棄産業と道路清掃』局のガブリエレ・ウンルーさんは『訪問してくれた人の反応は積極的。生ゴミから堆肥化へのプロセス、そのために使う機械、そして、もちろん(商品である)エアランゲンの堆肥“エアランガー・コンポスト”に興味を持っている』という。この日は昼から小雨が降ったにもかかわらず、1 日でおよそ 1,600 人が訪ねた。

 このオープンデー・イベントは今回で 3 回目。だいたい 2 年ごとに行っている。コンポストセンターそのものは 80 年代の半ばから使われはじめたもので、90 年代初頭に面積を拡大。設備を整備して正式にオープンした。同施設はエアランゲン市民のみを対象に考えられているが、もし堆肥を買うならば他地域の人も生ゴミを持参してもかまわない。

 利用者は 1 年間で 10 万人程度。この 10 年間、堆肥の品質もよく、生産している堆肥はすべて売り切れている。有機ゴミと堆肥の『地産地消』が成り立っているかたちだ。(了)

(『週刊京都経済』 2004年5月31日付に掲載)





【ニュース】
市営劇場を福引きでサポート


 近年、ドイツの公営劇場は自治体の財政難からその運営に腐心している。そんな中、ドイツ南部フュルト市(人口約 10 万人、バイエルン州)の市営劇場は総監督の采配やスタッフの質の高さなどがあいまって、集客率は 90 % を超える。『フュルト・モデル』とまで呼ばれる運営状態を維持している。この市営劇場は市民の発意によって設立された劇場で 2002 年には創立 100 周年を迎えた。

 こんな劇場をサポートしているのが劇場支援の非営利組織『テアター・フェライン フュルト』だ。街のリビングスタンダードである劇場は市民にとって文化の拠点であり、社交の場でもある。劇場のためのサポート組織があることはそれほど珍しいことではない。しかし、フュルトの場合、劇場の運営危機を乗り越えるために 1969 年に設立されたという経緯がある。以降、現代にいたるまで劇場に対して様々な支援をおこなっているが、中でもユニークなのはトンボラと呼ばれる福引を通してのカネ集めだろう。

 設立当初、メンバーの 1 人で地元新聞社のヴィリー・ヴォエトミュラー博士が発案。72 年にはじめて行われた。1 週間で 10 万の福引券が売れ、あわてて 2万5,000追加。その利益は 9 万マルク(約 600 万円)に及んだ。

 その後、92 年(10万マルク、約 670 万円)、97 年(25 万マルク、約 1,674 万円)、2001 年(20 万マルク、約 13,390 万円)と続く。毎年 10 月に市内で行われるビール祭りのときに福引券が販売されるが、97 年のときはビール祭りが終わっても 12 月まで販売を続けた。

 今シーズンのプログラムを発表する記者会見が 5 月に行われたが、このときサポート組織設立当初からの代表ヨゼフ・ペーター・クライネルトさん
(=写真)は 10 月に再びトンボラを行うことを発表した。

 この時点で地元周辺企業に 2,000 通、個人に1,000 通の案内を送る予定だと表明。福引券は 1 枚 1 ユーロで販売され、商品は地元の企業や個人の寄付によって用意される。今回はスコダ社の自動車 5 台がメインの商品になるという。

 サポート組織のメンバーは 1969 年の設立時に 350 人。現在 2,200 人以上のメンバーがいる。市営劇場といえばかつて貴族の所有物だったというケースが多い。それに対してフュルト劇場はあくまでも市民の発意だった。このマインドは今も生き続けている。(了)

(『週刊京都経済』 2004年7月2日付に掲載)





【編集後記】
 
 循  環


◆これほど、交通や情報、経済のグローバル化の中にある現代、地域社会の中ですべて完結することは無理な話ですが、エアランゲンに住んでいると、いろいろなところで地域内循環が生まれていることに気がつきます。そしてこの循環が地域社会の魅力を生み出しているように思います。

◆今回のコンポストセンターもそのひとつ。街の中でゴミと堆肥の循環が見て取れます。背景には、庭いじりの習慣も大きいのではないかと思われます。すこし前ですが、エアランゲンの文化フェスティバルなどを手がけていた人が引退しました。『今彼は何をしてるの?』と事情通の友人にきいたところ、『庭で仕事してるよ』。日本でいうところの晴耕雨読といった感覚なのでしょうが、日本の庭とちがい、芝生の世話だけでも相当『堆肥の原料』が出てきます。もっとも、文化関係のセレモニーなどではまだまだよくお見かけしますが。。。

◆庭仕事をすることなく、劇場のサポートをし続けているのがフュルト劇場のクライネルトさん。元は劇場近くの学校の先生でした。クライネルトさんの場合、地元企業と劇場の循環を作り出しているといえるでしょう。今回の記事で登場したトンボラ(福引)によって、地元の経済界が劇場を盛り立てる仕組みになっています。そして地元の企業に勤務している人々が、輝きのある地元の劇場に行くことができる。そんな循環が見て取れます。

◆さて、先の発行から1ヶ月以上たってしまいました。言い訳をすると、3人の子供たちが夏休みが大きい。おまけに、休み前に水疱瘡をもらってきたという有様。ただいま2人目発病中。来週あたりは3人目が発病するでしょう。生活のリズムがすっかり狂ってしまいました。(高松平藏)



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発  行  人 : 高松平藏 
発  行  日 : 不定期

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