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【ニュース】 本から異文化理解を ドイツ南部のエアランゲン市(バイエルン州、人口 10 万人)のプロテスタント系の文化施設、エヴァンゲリッシェン・シュタットアカデミーで『複数文化の中の子供たち』と題された本の展示会が行われた。 この展示会は 5 月 4 日から 28 日まで行われたもので、異文化理解につながる60冊の本が展示されている。うちその 42 冊についてはオリジナルがドイツ語以外の外国語によるものだ。対象は子供から青年まで。本の内容については、風俗や宗教を紹介した図鑑スタイルの本から異文化理解がテーマになった小説・物語が並び、自由に閲覧ができる。 展示会そのものはミュンヘンの国際青年図書館が 2002 年に企画・展示したもので、その後も他の都市を巡回している。展示されている書籍のほとんどは同図書館の蔵書だ。しかもここ 2 年ほどの間に出版されたものばかりを集めてあり、ほとんどの本はすぐに購入できる。エアランゲンでの展示会は会場になった文化施設と市内在住の外国人によって構成されている『外国人議会』が協力して開催にこぎつけた。 この展示会の狙いは本を通じて、自分たちになじみのないこと、未知のものとの差を見たり、理解のための支援することにある。『子供にとって日常生活から違う世界にはいるためには本が必要』(外国人議会のマリアネ・ヴィトゥングさん、スエーデン出身)。ただ、異文化とひとことでいったときにこの展示会でも目立つのがアフリカや欧州の国々。物理的に遠いという地勢的な条件から日本が異文化理解の対象になることは少ないようだ。 エアランゲンの外国人の割合は 15.1%(2002年)。同市はグローバル企業の総合電機メーカー、シーメンス社の一拠点であり、また大学があるせいか、全独 8.9%(2001年) よりも割合が高い。実際、学校や幼稚園でも身近に外国籍や外国にルーツをもつクラスメイトがいる状態だ。 展示の文化施設のレナテ・アベサーさんによると、市内の学校にも案内をしており、展示会が始まった時点で、生徒や先生が展示会場を訪問する予約があったという。オープニングでは両親のどちらかが外国籍の子供が外国語の本の朗読をしたり、ダンスや映画の上映が行われた。世界中で国は約 200、文化圏は 1 万程度あるといわれている。数字からいえば、ひとつの国の中で多文化化になることは必至だ。(了) (『週刊京都経済』 2004年5月24日付に掲載) 【ニュース】 メキシコ人舞踏家、『大野一雄フェスティバル2004』 に ディエゴ・ピニョンさん 舞踏は日本のオリジナル前衛芸術として知られるダンスの一分野。地元のメキシコ・シティで活動する舞踏家、ディエゴ・ピニョンさん(=写真)が来日している。 今月 22 日から来月4日にかけて横浜市で行われている『大野一雄フェスティバル2004』に出演するのがピニョンさんの来日目的。1日、2日に大野慶人さんが手がける舞台に出演する。 ピニョンさんは 1957 年メキシコ・シティ生まれる。79 年にダンスをはじめ、87 年に舞踏と出会い衝撃をうける。大野一雄・慶人さん親子をはじめ、映画『たそがれ清兵衛』で銀幕デビューをはたした田中泯さんなどに師事する。以来、舞踏家として活躍。たびたび日本も訪ねているほか、メキシコをはじめ欧米で公演、ワークショップなどの活動を行っている。 こうした精力的な活動は様々な広がりをみせている。たとえば 90 年代後半ドイツ・ニュルンベルグ市でワークショップを断続的に行っていた時期がある。99 年同市で行った公演には約 230 人の観客が訪ねた。日本にルーツを持つ『舞踏』の公演としたは多く、前年の 3 倍以上の動員数だった。これはクチコミで増えたもので、当時のワークショップの参加者が独立して舞踏のアーティストとして活動している例もある。 方法論としての舞踏は個人の身体にしみついた文化や記憶といったものを身体表現として作品化していく。こうしたところに世界に受け入れられる普遍性が見出せる。実際ピニョンさんもメキシコの伝説をモチーフにした作品をつくっている。『今回はピニョンさんは私の振り付けに応じて踊るが、彼自身、自国の文化などに根ざした舞踏はわれわれより深いものがあるのではないかと思う』(大野慶人さん) ピニョンさんの出演するフェスティバルは世界的に知られる舞踏家、大野一雄さんの名を冠した現代芸術の催しで今年がはじめて。1929 年に建てられた歴史的建造物(旧第一銀行と旧富士銀行)を活用した芸術プログラム『BankART 1929』の一環だ。 大野一雄さんは 1906 年生まれで今も現役。横浜市に自宅と稽古場がある。慶人さんによると、60 年代草創期の舞踏は『肉体を肉体として造形していた。それは新しい古いということではなく、本質的なもの。このフェスティバルではそういったことを提示したい』という。(了) 【編集後記】 住み込み記者 ◆前回、『100 回目の発行です』、と書いたところ、意外にもあれこれメールをいただきました。驚きつつもやはり嬉しいもので、発行者冥利につきます。メールを頂いた方、ここでも改めてお礼申し上げます。 ◆<ドイツ在住ジャーナリスト>という肩書きがついてまわります。私自身、たまたま住んでいるのがエアランゲンですが、どこに住もうが、住民として住んでいる街を報道する、という意識を持っています。かっこよくいえば『ジャーナリスト・イン・レジデンス』。わかりやすくいえば『住み込み記者』という感じでしょうか。地域には具体的な動きがあり、その背景には泥臭い人間関係もありますが、同時に固有の文化や哲学も見出せます。さらに地域を凝視すると世界が透けて見えるものです。 ◆環境問題などは 21 世紀にはいった現在、より世界共通の問題であり、技術やノウハウを高める必要があります。同時に社会システムにしていくときには歴史や文化、哲学といったものが影響します。昨年出版しました『エコライフ ドイツと日本どう違う』(化学同人)もタイトルがさすようにドイツと日本の文化比較論的な視点で執筆したものですが、具体的には故郷の奈良、ゆかりのある京都、そしてエアランゲンが主な舞台。実は『インターローカル』な本なのであります! といいますか、私自身それしか書けないだけの話なのですが。。。。(苦笑) ◆100 回目の発行に、I.N.さんからこんなメールをいただきました。『他の地域の状況と自分のいる地域の状況を比較することにより、前進につながる発想が可能になります』。わが意を得たりと心の中で小躍りしているわたくしなのでした。 ◆さてさて、前回触れましたイタリア行き。『アドリア海でバカンス』などというと実に響きがよろしく、実際、滞在中のお天気もよし。子供たちも大喜び。私ものんびり過ごしたはずですが、帰宅後の 1 週間はぐったり。真っ青に抜けるような空と太陽に身を置いたところ、充電というより放電してきた感じであります。(高松平藏) |
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■■インターローカルニュース■■ 発 行 : インターローカルジャーナル http://www.interlocal.org/ 発 行 人 : 高松平藏 発 行 日 : 不定期 Copyright(C) Interlocal Journal |
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