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■■ Interlocal News 2004-04-29 (vol. 97)

 

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□□ 目次 □□
【ニュース】 好調、10万人都市のメディカル・バレー戦略

【ニュース】 CO2削減への“本気”
【編集後記】 アートとビジネス施設

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【ニュース】
好調、10万人都市のメディカル・バレー戦略



入居企業ECE社の医療訓練機器。部品の調達に市内の食肉解体所と連携している
 医療技術、医薬関係に特化したベンチャー企業育成をめざすドイツ南部のエアランゲン市(人口 10 万人、バイエルン州)で昨年 9 月に創設された医療ベンチャー向け基金 MTPDF (MedTech Pharma Development Fonds) の半年間の評価と今後の展望が明らかにされた。

 先月 31 日、市内のインキュベーター施設(『孵化(ふか)』の意)、IZMP (das Innovationszentrum fuer Medizintechnik und Pharma in Erlangen)で記者会見が行われた。同施設は昨年 1 月から本格的に稼動。基金は医療技術、医薬関係のマーケティング戦略の立案、ノウハウの交流、大学や既存企業との協力関係を強めるといったことが目的で、入居企業が主に支援をうけるかたちだ。

同施設には当初 16 社が入居。現在 18 社が入居しており、満杯状態。今後さらに4,000 平方メートル拡張する予定だ。同施設のマティアス・ヒーゲルさん(業務執行者)は『昨年はメッセにも出展した。新しいものはどんどん外へ発信していかなければならない』。さらに、『(メッセ出展は)企業誘致も目的』と医療ベンチャー企業の集積に意欲を表明した。

 基金創設から半年後に中間報告できること自体が順調であるとアピールしたのは市長のシーグフリード・バライス博士。その背景には『エアランゲン大学の研究者と企業経営者をつなぐ道が短いという特徴がある』(同氏)とコミュニケーションのよさを強調。また、基金のメーン出資者はバイエルン州経済省だが、実際の運用していくのは企業や銀行、民間の団体のネットワーク。『パブリック・プライベート・パートナーシップ方式だ』。メディカル・バレーの実現に産官学の密な関係がカギになっていることを示した。

また IZMP にはすでに『スタートアップ』とはいえない企業も入居している。基金の活用支援パートナーの 1 つ、IGZ (86年創設のインキュベーター施設)の業務執行者ゲルド・アリンガー博士によると、ベンチャー企業は同じような欠点をもっているが、“ベテラン”の企業とコラボレーションすることで、欠点を補えるとの狙いがあるという。『そうしないと問題がおこりやすい、成功例から学ぶべきだ』(同氏)。またバライス市長も“ベテラン企業”に入居してもらうように頼んだことを明らかにした。

 エアランゲン市がメディカル・バレー構想を打ち出したのは 1996 年から。同市および隣接都市(フュルト市、ニュルンベルグ市)で 60 社以上の新しい医療関係の企業が生まれた。現在は約 170 の革新的な企業があり、200 の付随企業、ネットワークパートナー、サービス分野の企業があるという。(了)

(”週刊京都経済” 2004年4月12日付に掲載)





【ニュース】
CO2削減への“本気”


 温室効果ガスの削減は全世界での共通課題。しかし政治や産業、国際情勢がからむだけに一筋縄ではいかない部分も多い。それでもやらなければならない、そんな『本気』を感じさせるものがドイツ南部の地方都市・エアランゲン(人口 10 万人)にある。

 2000 年の段階で同市には居住可能な建築物が 16,325 あり、ここに 52,000 世帯が住める。エアランゲンの場合、暖房のためのエネルギーの半分がこうした一般の住宅でつかわれ、CO2 発生の 55 %をしめる。省エネ型の暖房機器に入れ替えたり、石油から天然ガスにかえるなど、91 年から対策がはじめられた。

 その結果、既存の住宅による CO2 の量は減ったが、同時に新築される住宅もあるため、エアランゲン全体の CO2 の量はかわらなかった。それでも見た目にわかるのが新興住宅地。太陽光発電のためのパネルや太陽熱温水器をのせた家がちらほらと目に付く。以前からある住宅供給会社がつくった集合住宅なども壁を厚くする工事が行われている。すこしづつだが、着実に動いている。

 しかし、決して行政に強制力があるわけでもない。同市環境局の『環境とエネルギー』のコンサルタント、コンラード・ヴォルフェルさんは『われわれの使命は情報提供』という。新築を考えている人には『予算に余裕があれば省エネ型の家づくりを
してください。長期的にみればコストは安い』と勧める。経済的な理由には説得力がある。住宅の省エネ化を進める同局の配布チラシをみると、窓からお金が逃げるイラストがえがかれ、エネルギーと費用にまつわる計算例が書かれている。

 近隣都市との連携もはじまった。昨年 9 月には隣接するニュルンベルグ市の環境局や手工業組合、エネルギー案系の団体などと Nerzwerkes BAU und ENERGIE (ネッツベルケス・バウ・ウント・エネルギー)という非営利組織をつくった。エアランゲ
ン市の周辺地域全体の省エネ型住宅を増やすためだ。銀行と新改築をしたい人との仲立ちにつながるプロジェクトや相談業務、情報提供を行う。

さて、業務内容だけを見れば、日本の行政でもできそうなことばかりだ。あるいは同じようなことをすでに実行している自治体もあるかもしれない。しかしながら、『本気』を思わせる動きがでてくるのだろうか。ひとつには、職員の質にありそうだ。専門意識が強く知識の豊富な職員が配置される。そのための弊害がないわけではないが、『住民感情』という顔色をうかがうようなところが少ない。

 未来にむけて何をすべきか。街の舵取りを職員たちがそれぞれの職能をもって動かしている。そんな様子が浮かび上がる。(了)

(”週刊京都経済” 2004年2月2日に掲載)






 【編集後記】
 
 アートとビジネス施設



◆医療ベンチャーを育成するビジネス・インキュベーター IZMP のカフェでこの半年ほどで地元の音楽家が照明を効果的につかったコンサートを2度行ないました。
(=写真)内容はピアノ、弦楽器、パーカッションによる“現代音楽”。小石を投げ込んだ水面の変化のような演奏で、それにあわせて、ブルーやレッドの照明が変化します。

◆このコンサート、2 度とも夜中の 11 時ごろから行われたものなのですが、前衛的な演奏であるにもかかわらず、老若男女 100 人ぐらいの人が集まったでしょうか。文化や芸術関係の人が多いですが、まったくアートと関係のない仕事をしている人もけっこういますし、文化とは無関係のところで知り合った人が、お酒を飲みながら音楽に聞き入っていたりしているのを見つけることがあり、意外な一面を発見することもあります。

◆ビジネス・インキュベーターでのコンサート。医療やベンチャー企業とは普段関係のない人も足を運ぶわけで、ともすれば、市民生活の中では浮いてしまいそうな施設もこうやって、街の中で存在感を増してくるのだと感じました。

◆そういえば大阪城のすぐそばに大阪ビジネスパーク(OBP)というビジネス・ゾーンがあります。数年前から大阪周辺の芸術系大学とのネットワークを強め、ビジネス街にちょっとした変化をおこしつつあります。

◆先週末、自家用車のタイヤを冬用から夏用に交換。それから今年はじめてのアスパラガスを食べました。ドイツでホワイト・アスパラは夏の訪れを告げる旬のごちそうです。自転車に乗るのが気持ちのいい季節になりました。日本は大型連休に突入ですね。(高松平藏)



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発  行  人 : 高松平藏 
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