■■インターローカル ニュース |
|||||
|
─自治体の主権と独自性 | ≪前号|次号≫ | |||
|
□□ 目次 □□ |
|
|||
|
|||||
【ニュース】 ドイツ、ゆれる“地方主権” ドイツは地方主権といっていいほど地方の独立性が高い。しかしながら、近年、税制の変更や社会の変化などから各自治体はその運営に苦戦している。このほど、ドイツ南西部のバーデン・ヴュルテンベルク州に位置するシュヴァビッシュ・ハレ市(人口約 3 万 7000 人)の市長、ヘルマン・ヨゼフ・ペルグリムさん(=写真)が所属政党・SPD(ドイツ社民党)の選挙対策会議の中で同市の変化と腐心している点を述べた。 同市はここ25年、税収入の潤沢な自治体として知られていた。ところがこの 3 年で急激に減少した。2001 年の段階で 1 億 7,300 ユーロ(約 236 億円)だったものが今年は 8,100 万ユーロ(約 110 億円)という落ち込みようだ。 その理由は税源の中心になっていた銀行と企業の経営環境の変化にある。戦後、持ち家を推進するためにつくられた建築銀行の経営状態は良好だが、親会社に相当する銀行が経営難に陥った。同時期に子会社や関連会社の決算と連結したかたちで営業税を算出するようになり、親会社の経営難によって建築銀銀行からの営業税収入がなくなった。この決算方法の変化により、市内のテレコムからも営業税の支払いもなくなった。 また市内の航空機部品製造会社の売上が 9.11 を機に極端に落ち込んだ。どの自治体でも程度の差こそあれ、財政難に陥っているが、同市の場合は一度に税収の大黒柱を失った。25 年間のストックがあるので、なんとか倒産せずにすんでいるが、劇場やプール、学校など市民サービス部門の維持は難しい。 もともと営業税は地方自治体のための財源だった。そのため、自治体の企業誘致が進み、人材、雇用も各地方ごとに充実した『地方主権』の大きな要因になっていた。当初営業税のうち 20 %が政府の『取り分』だったが、2001 年には 30 %に増加。不景気ともあいまって、自治体の財政難が加速した。それに対して、昨年 12 月に営業税に関する改革をおこなったが、『比率をわずかに変えただけ。このまま営業税をなくす方向にあるのでは』とペルグリム市長はいう。 営業税のかわりに消費税を上げるという議論も出てきている。消費税は国の管轄の税金だ。これでは国と地方の関係が、日本の『 3 割自治』と同様の財政構造になる。さらに州、地方、地域、郡といった 7 段階ある地域管理の方式を変えようという議論も高まっている。この 2 つの変化があれば、自治体は現在の 80 %の収入で、しかも国の『下請け』をするのみになる。『本当に自治体に必要な事業かどうか判断もできなくなる』と同市長は懸念を示す。 日本は国の財源の問題で地方分権を進めているが、ドイツ国内では中央集権化が効率を上げるのではないかという議論がでてきているかたちだ。(了) (”週刊京都経済” 2004年3月1日付に掲載) 【ニュース】 世界の静岡 『あなたは、静岡の人ですか?』 甲賀雅章さんは次々と話し掛けられる。このほどドイツで行われた見本市 Internationale Kultureboerse Freiburg (インターナショナル・カルチャーマーケット・フライブルグ)での様子だ。話しかけてくるのはワンマン・バンドや道化などのストリート・パフォーマンスのアーティストたち。熱心な売り込みである。彼らのあいだで静岡市はよく知られている。 同市では 1992 年から『大道芸ワールドカップ静岡』というフェスティバルが行なわれている。甲賀さんは実行委員会のエグゼクティブ・プロデューサー。招聘(しょうへい)するアーティストを探すために毎年この見本市を訪ねている。また『大道芸ワールドカップ静岡』としてブースを構えている。 同氏の本業はカタログ製作から街づくりまでおこなうコンサルティング会社の経営者。デザインの見地からの仕事が特徴だ。街づくりに興味をもったのは 16、7 年前にまでさかのぼる。直接的には商工会議所青年部の活動に加わったことが大きいが、自分の生まれ育った街の将来が気になった。『これから静岡がどうなっていくのか、お茶とみかんの街でいいのか、という思いがあった』(同氏)。 さて、欧州ではどんな小さな街でも文化・芸術系のフェスティバルがよく行われる。街そのものに一体感があり、フェスティバルの特徴はそのまま街の存在感につながる。また同時に街が持つ理念やビジョンといったものとしっかり結びついている。甲賀さんが考えるのもこういった構造だ。したがって『集客目的のイベントがしたいわけではない。フェスティバルはあくまでも仕掛けなんです』という言葉がさらりと出てくる。経済重視やハコ物などのハード重視の街づくりから、過ごしやすさや生活の楽しさのある街にするのが目的というわけだ。 地方分権の時代を迎える現代こそ、街がどうあるべきかというビジョンとフェスティバルをつなげて考える発想が必要だ。しかし『この根幹の考え方をほかの人と共有していくのは正直、地道な作業だ』(同氏)。 それでも、フェスティバルを通じて、じわじわと街が変化しているのも確か。大道芸のフェスティバルでは約 1000 人の市民ボランティアが参加するなど、街の一体感が出てきた。 『ノリが悪い』といわれていた市民気質も変わってきた。最近はゴミ減量やバリアフリーなどの小さなプロジェクトをフェスティバルにはさみこみ、市民が自分の街を考える共通の足場のような役割もでてきている。さらに、ドイツの見本市での知名度は静岡の存在感の高まりだといってもいい。 静岡の強いアイデンティティができつつある。(了) (”週刊京都経済” 2004年2月10日に掲載) 【編集後記】 フライブルグの芸術見本市 ◆フライブルグの芸術見本市(インターナショナル・カルチャーマーケット・フライブルグ)が行われたのは今年の 1 月 26 日から 29 日。私の見本市取材の経験でいえば、ニュルンベルグやフランクフルトなどの大規模なメッセ・センターが多いため、それを想像して行ったところ、実にこぢんまりとしたもの。それでも90 以上のショーケースと呼ばれる芸のプレゼンテーションが行われるなど、中身の濃いものでした。 ◆出展者はチケット販売のシステム会社やオーガナイザーなど。この中には『大道芸ワールドカップ静岡』のブースを出していました。それから、場を賑わせてくれるのが大道芸やカンパニー(アーティストのグループ)のアーティストたち。会場内でデモンストレーションを行うわけです。 ◆この見本市、私の体験を重ねても、見本市としては決して大規模なものではありませんが、バイヤーがきちんといるからこそ成り立っているという点は着目すべきでしょう。開催期間も考えてあります。欧州で夏場は多くの街でフェスティバルがあり、アーティストにとっては『かきこみ時』。したがって、1月といえばオフ・シーズンでもあり、街にとってはプログラムの決定もこれから。アーティストにとってはこの見本市で夏の仕事が決まっていく絶好の『プロモーション』の機会のようです。 ◆そんな事情を考えると、この見本市、フェスティバル文化がある欧州だからこそ成り立つものかもしれません。東京や大阪でも同様の見本市が行われますが、日本ではバイヤーの数が少なく、『マーケット』としてどれほど機能しているのか疑問です。欧州のようなフェスティバル文化もないことを考えると、見本市の運営にはもう一押し、仕掛けや戦略が必要な気がします。 ◆次回は2005年1月17日から20日。17回目の開催になります。フライブルグといえば『環境首都』として知られている街ですが、大道芸などのアーティストにとっては静岡同様、『芸術見本市』の街として世界的に知られているのでありました。(高松平藏) インターナショナル・カルチャーマーケット・フライブルグ |
|||||
■■インターローカルニュース■■ 発 行 : インターローカルジャーナル http://www.interlocal.org/ 発 行 人 : 高松平藏 発 行 日 : 不定期 Copyright(C) Interlocal Journal |
|||||
|
★引用、転載の場合「高松 平藏」が執筆したこと、または「インターローカル ニュース」からのものとわかるようにしてください | ||||
|インターローカルニュースtop | 記事一覧 | |