ドイツ・エアランゲン在住ジャーナリスト
高松平藏 のノート
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2008年6月03 日



シャル・ウィ・ダンス? を教会で


教会のホールが一変、舞踏会会場になった夜があった。そんな一夜の様子を書いておきたい。


『檀家』のご夫婦がやってくる
4月に近所の教会で『春の舞踏会』があった。夜7時ごろになると、三々五々着飾った紳士淑女がやってくる。

実はこれ、近所の教区に住んでいる人たちなのだ。日本の感覚でいえば『檀家』といったところか。ペアの紳士淑女たちは教区に住むご夫婦である。

ほかにも、教区の若者たちが着慣れぬ服と、はきなれぬ靴を気にしながらやってくる。

演奏はビッグバンドだ。毎年CDなどで音楽を流していたそうだが、今年はビッグバンドの生演奏で開くことになった。そういう『特別』の年だったことから、私は写真撮影を頼まれたのだった。

『イパネマの娘』『ムーンライト・セレナーデ』といったスタンダード曲が演奏される。照明も適度に凝っていて、『ご夫婦ペア』のたちは華麗に踊る。

若者たちは、時々カウントを確かめながら、ぎこちなさを隠せないが、それでも楽しそうに踊る。

教区ホール
ドイツの教会の様子を見ていると、たいてい『教区ホール』があって、そこで文化の催しや展覧会、集会、コンサートなどが行われる。

ドイツで30歳とか40歳という区切りのいい歳の誕生日には大きなパーティを開く習慣があるが、人によっては教区ホールをかりて行う人もいる。

ほかにも楽器演奏の練習場所になったりすることもあるし、夏休みやクリスマスには家族向けのプログラムを開催することもある。

こんな様子を見ていると、教会とはいわばコミュニティの交流と文化のための施設として機能しているのがわかる。毎週行われるミサに出る人は昔にくらべると減っている。が、住民ベースで教会を見ているとそれでも宗教施設のコミュニティにおける役割とは何かということを考えさせられる出来事がよくある。

春の夜の夢
ひるがえって、カメラを持って会場内を歩いていると、いきなりある女性が近づいてきて私に挨拶してきた。

アジア人の私は印象が残りやすいせいか、人々から覚えてもらっていることが多い。そのため、こちらはすっかり忘れているのに、声をかけていただくことがある。この時もそうだ。だれだったかと思い出そうとしていると、その様子を察してくれた。『ウチの子供がお宅のお子さんと同じクラスなんですよ』と女性。

ああ、そういわれれば学校の近所で何度か見かけたことがある。息子の同級生のお母さんだ。舞踏会の『淑女』になると、印象がまったく異なる。

それにしても、ドイツの社交ダンスなどのダンス人口の多さは様々な局面で感じていたが、こういう場所で踊る楽しみがあるのかと再認識させられた。

この教会は古く、大きい。外見は『いかにも教会』だ。しかしこんな教会の中で、地域住民の人たちが夢のような一夜をすごしていたのだ。(了)


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