ドイツ・エアランゲン在住ジャーナリスト
高松平藏 のノート
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2007年11月18日



奈良と大阪とニュルンベルク

エアランゲン在住のアーティストがアートプロジェクトを行った。彼の誘いに応じて私も参加した。このプロジェクトについて少し書いておきたい。


ナゾナゾ・プロジェクト
アーティストの名前はジェローム。フランスのマルセイユ出身だ。彼がはじめたプロジェクトは次のようなものだ。

今月から4ヶ月にわたり、エアランゲンに隣接しているニュルンベルクの地下鉄の4つの駅に巨大な写真が掲げてある。それぞれ大阪、大和高田市(奈良県)、上海、シェンツェン(深セン)の風景である。日本の写真は私が撮影したものだ。中国の写真はやはり中国出身でエアランゲンに住むユン・チャンさんが自国に戻ったときに撮影した。
ニュルンベルクの地下鉄の駅に展示された私の写真。サイズが小さいのでわかりにくいが、ジェロームさんによって加工されている。写真左は関空から大阪に向かう途中の橋の上。右は大和高田市近鉄浮孔駅のそば。

さて、これらの写真をよくみると風景に溶け込むようにさり気なくナゾナゾが書いてある。地元の新聞社を通して、答えを応募することができ、正解者にはなんらかの賞品がもらえる。

クセモノはナゾナゾの言語である。日本語、中国語、フランス語、ドイツ語の四カ国語で書かれているが、同じ問題を四カ国語に翻訳してあるのではなく、それぞれバラバラの問題なのだ。だから日本語のナゾナゾは日本語がわかる人にしか読めない。

プロジェクトの意図は、人々になじみのない風景や言語を凝視させようということであるが、もちろん、これはグローバリゼーションやインターカルチャーといったテーマを念頭においている。とりわけジェロームさんは学生や語学関係者に関心を持ってもらえればうれしいとしている。まあ、だからナゾナゾに応募して正解することよりも、じっくり写真を見てもらっていろいろ考えさせることができたら成功だということである。

グローバル=インターローカル
地元の新聞からも取材を受けた。左がジェロームさん。なお、背景の写真はユン・チャンさんが撮影した中国のもの(2007年11月16日付 Abendzeitung)
プロジェクトに対して私自身の所感を述べておく。

現代はグローバリゼーションの時代といわれる。いろいろ議論はあるが、私は国境を越えたローカル同士が幾重にもつながった状態をひとつのビジョンとして考えている。それをジャーナリズムをつかってやってみよう、という私のささやかな試みが『インターローカルジャーナル』である。

それからグローバリゼーションの時代の個人は、より自分の故郷が重要になってくるのではないかと考える。私にとってエアランゲンやこの周辺をさすフランケン地方は、もはや第二の故郷だ。そして当然、日本には『第一故郷』の奈良や関西がある。

このプロジェクトは私の2つの故郷をフランス人のアーティストの手によって組み合わせられた。『グローバル=インターローカル』ということがうまくかたちになったと思う。これは個人的にも愉快だ。それだけに、たまたまエアランゲンで知り合い、そして私に声をかけてくれた彼には感謝している。(了)

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