ドイツ・エアランゲン在住ジャーナリスト
高松平藏 のノート
前へ次へ
|インターローカルニュース | ノートのリスト |

2007年7月28日



交通技術─牽引という方法

ドイツの交通をみていると、必要な車輌を牽引する自動車をよくみかける。牽引という発想は馬車文化の名残のように思えてならない。

とにかくひっぱれ
アウトバーンを走っているとよく見かけるのだが、自動車がなんらかの車輌を牽引しているケースが多い。日本で牽引スタイルの車輌といえば、せいぜいトレーラーぐらいだが、ドイツではかなりの種類の牽引車輌がある。馬を運搬するもの、プライベートのボートを運ぶもの、家、すなわちキャンピングカーを運ぶものなどなど、なんでも自動車につないで走ってしまえ、と考えているのではないかとすら感じる。

農家や大きな庭の整備をするような人なら、牽引用の荷台を持っていて、自分の自動車につないで伐採した木や刈り込んだ草を積んで運ぶような風景にお目にかかることもある。

電車もそうだ。日本の電車は動力分散式、各車輌に動力がある。しかしドイツの電車は動力集中式、すなわち汽車の時代と同じ発想で動力車輌が客車を牽引するのが主流だ。

牽引というスタイルは自転車にもある。自転車に荷物を運べるリヤカーをつなぐことがある。日本にも昔は大きなリヤカーがあって、荷物運び専用の太いタイヤの黒い自転車でひいていたが、あれよりももっと小型。そして今もよく使っている人がいる。

子供を乗せる幌つきのリヤカーなどもある。たいてい2人乗りのものだが、自転車の荷台に子供用のイスをつけて、幌つきリヤカーをつなぐと一度に3人の子供を運ぶことができる。わが家は子供が3人いるが一時期、ずいぶん重宝していたものである。また幼稚園で行事があったり、親子で参加できるイベントなどがあると、駐輪場は幌つきリヤカーでいっぱいになる。日本ではちょっとお目にかかれない風景だ。

馬車文化
交通の歴史をみると、それぞれ専門の研究があるのかと思うが、牽引というスタイルの多さを見ていると、馬車の文化が延長線上にあるのかと思えてならない。

そもそも自動車のセダン、クーペ、バン、ステーションワゴンといった種類分けも馬車の用語だったというし、昔のアメリカのステーションワゴンというと木目のパネルが張ってあった。これも馬車の名残だと聞く。

それから日本とドイツを比べたときに、道路の広さが格段に異なる。私自身、ここ数年は日本に一時帰国しても、自動車の運転をしていない。道路幅が狭くて、怖いのだ。一方なぜアウトバーンがスピード無制限の道路にできるのかといえば、それなりの道路幅があり、カーブもかなりゆるやかにつくってあるからである。

ドイツは日本に比べると国土は平坦である。それから馬車から発達した交通技術体系がある。そんな条件があいまって道路幅の基準が決まってきたのではないだろうか。

電車もそうだ。日本でなぜ動力分散化したのかというと、曲線や勾配が多いといった事情があったようだが、逆にいえばドイツは動力集中式を維持することができる環境だったといえまいか。先日電車に乗って気がついたのだが客車のつなぎ目がやけに短いのである。たとえていうならば、客車と客車がまるでキスでもしているようなつながり方だ。これは線路のカーブがゆるやかであるということであろう。

ところでドイツの夏休みは州ごとに異なる。バイエルン州では7月27日の金曜日に学校がおわった。夕方、住宅街を自転車で走っているとキャンピングカーに電気コードがつながれ、充電していたり、荷物を詰め込む用意をはじめている。夏休みに入るやいなや、休暇でキャンプ地へ出かけるのであろう。馬車文化、これがドイツの休暇スタイルの一端をつくったといえるだろう。(了)

無断転載を禁じます。
執筆者の高松 平藏についてはこちら
|インターローカルニュース | ノートのリスト |