『1%(ワンパーセント)クラブ』という組織が日本経団連の中にある。経常利益や可処分所得の1%、あるいはそれ以上を社会貢献のために自主的に充てていこうとする企業や個人が会員で、1990年に設立された。同組織の調査によると、最近の社会貢献の動機をみると地域社会への視線が強まっているようだ。
1%クラブは『2005 年度 社会貢献活動実績調査結果』(2006年12月19日付)をこのほど発表した。
この調査は日本経団連(日本経済団体連合会)が1991年から会員企業と1%クラブ法人会員を対象に、行っているもので、今年は3年毎の大規模調査6回目にあたる。同調査の意識・制度調査結果によると、企業のCSR(Corporate
Social Responsibility)への理解と実践が進みつつあるという。
社会貢献の活動の捉え方を『社会的責任の一環』(86.1%)、『地域社会への貢献』(75.2%)という2点に集中した。この傾向は従来からあったそうだが、前回2002年度の調査に比べると微増した。
同時に、90 年度に比べて大幅に回答比率の減少したものに次の項目があるという。
コーポレートブランド向上の一方策: |
56.4%→13.2% |
利益の一部の社会還元: |
46.6%→12.5% |
社風の形成を促すための一方策: |
23.7%→2.7% |
さらに、社会貢献活動への取り組み姿勢そのものが強化したとする企業も増加している。
こうした調査結果の傾向から『社会的責任の一環』『経営理念の具現化の一方策』と捉える傾向がより強くなったとしている。前回(2002年度)の大規模調査の時にくらべると、調査アンケートの回答も100社以上増え、447社になったという。
■理解が難しい『生活の質』
同クラブのホームページによると、1%クラブの設立前には欧米にミッションを派遣し、こういった『パーセントクラブ』があることを学んだという。日本は『欧米流』の経営を学べという潮流があるが、この経緯をみると、1%クラブもその流れの中にある。
さて欧米の『欧』に住む私からみると、企業の社会貢献の対象は企業が立地している『(地域)社会』というケースがけっこう多い。
この地域社会のあり方を見たときに、はたして日本企業は『欧米』からきちんと学びとったのかどうかはいささか疑問を私は持っている。
というのも、ドイツの企業や銀行がなぜ(地域)社会貢献をするのかといえば、これによって地域社会の生活の質が高まるからだ、とすることが多い。この意味が日本で大変理解できにくいと思うからだ。
日本に比べるとドイツは今でも職住近接というのが主流だ。そうなると地域社会への貢献によって、社員とその家族の生活の質を高めるということにつながる。
また、地域社会の生活の質が高いと、優秀な人材が集まりやすいということも出てくる。これは社員にとっても質の高い人材を雇用できるということにつながる。企業と地域社会の関係に循環性を見出せるのだ。
この考え方は実は自治体の企業誘致政策や文化政策にも含まれる考え方なのだが、仕事と生活が乖離しがちな日本からは『地域社会の生活の質』がどういう意味を持つのかが理解しにくい。
ひるがえって、この1%クラブの結果そのものからは、企業も社会の一員であるという意識が高まってきているといえる。が、地域社会と企業の関係性はどう捉えているのだろうか。
地方分権の時代、企業と地域社会の中でいい循環をつくることは地方の結晶性を高める。これはグローバル化が進む中、地方が世界と対峙するときにも強さにつながるはずだ。(了) |