ドイツ・エアランゲン在住ジャーナリスト
高松平藏 のノート
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2006年10月31日


忍者番組で感じた情報の偏り


ドイツのテレビ局が忍者に関する番組を放送した。所感を書いておく。


放送されたのは2006年10月29日19時。民間放送局のRTL2の『Welt der Wunder(カタカナ英訳すれば ワールド・オブ・ワンダー)』という情報番組。ちゃっかり同放送局で放映している日本の忍者アニメ『ナルト』の宣伝までいれている。

ともあれ、Ninjaという言葉だけが先行している昨今、忍者の技術・道具がふんだんに紹介された点はよかったと思う。

ただ、絵がよくなかった。
番組中、忍者の活躍ぶりがわかるように俳優が演じているのだが、衣装、ロケ、小道具がひどいのだ。

忍者や侍を演じていたのは多くは日本人と思われるが、侍などはぼてかづら(和紙でつくったかつら)のようなものをかぶっている。致命的なのは忍者が忍び込む城。おそらく欧州の古城を使ったのであろうが、それゆえ、ヘタするとハリーポッターでも出てきそうな雰囲気すらあるのだ。

色々な人から聞いている範囲では、ドイツに紹介される日本像は昔はかなりでたらめだったそうだ。あるドイツの有力雑誌などでも『アジア担当』が中国だったか、どこかに特派員を一人ポンとおき、その特派員が日本の記事まで書くのである。これはドイツにいながら、スペインのことも書けといっているようなもので、記事の内容がいいかげんになるのは目に見えている。

そんな話をあれこれ聞いていたのだが、私がドイツに住み始めてから見る『日本』は、ところどころおかしなところもあるが、かなりきちんと調べているのを感じていた。

ところがである。今回の『忍者』、道具はかなり正確に紹介されたがそれ以外はひどかった。

■忍者の専門家が多すぎた?
この情報加工の偏りはなんだろうと考えた。

番組中に戸隠流忍法34代宗家の初見良昭氏がよく登場する。私が子供のときに忍者を紹介する子供向けの記事に同氏はよく登場していた。また子供向け特撮番組『世界忍者戦ジライヤ』(1988年)にもそのままの役柄で登場していた。現代に生きる本物の『忍者』である。

番組では初見氏の道場の様子も登場するのだが、外国人がかなり多いのに気がついた。そこでアルファベットで名前を入力して検索すると、出てくる出てくる。時々、ファンやマニアのあいだでは世界的に有名な人物や分野というものがあるが、初見氏もそういう一人なのだろう。

ドイツにも初見氏の関係する道場があるのだが、どうやらここの人たちが番組に協力したようなのだ。

繰り返すが、この番組で忍者の道具などについては正確だ。

ひょっとして忍術をよく知る人はたくさん番組に協力する人がいたのかもしれないが、日本を知る人はそれほどいなかったのだろうか。あくまでも私の想像の域を出ないのだが、番組の情報の質の偏りの裏にはそんな事情があったような気がしてならない。(了)

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