2008-04-13 (vol. 148))
─ キンダーセンター・トミチール園長 シビレ・ハルトルさん インタビュー 2/2
ジャズ・コンボ方式

ハルトルさん自身がいろいろアイデアがあっても、プロジェクトや運営コンセプトのかたちにしていくのは大変です。特にほかの保育士の先生たちとどうしていますか。
『運営コンセプトについては、すべての先生たちによってつくられます。なぜかというと、全員でつくりあげたコンセプトを全員が納得し、それに基づいて働かなければならないからです』
『コンセプトづくり議論を園内で行いますが、私が調整役をします。また特定分野の専門家に来てもらってレクチャーをしてもらうこともある。こうしたことを経て、継続的にコンセプトを開発していき、仕上げていきます』。

■面白いやりかたですね。チームリーダーに関する特別な勉強をしましたか?
『従業員に対する指導に関する継続教育はうけましたがチームリーダーに関しては特別な訓練は受けていません。ただチーム運営の方法論としてジャズ・コンボをモデルにした新聞記事を読んだことがあります』。

■御自身も趣味でサックスの演奏をなさっていますね。
『はい。その記事は私にとってしっくりきた。指揮者がいないがルールがないわけでもない。そんな中で他のスタッフの強みを生かしていく、というやり方です』。

日本の幼稚園

日本の幼稚園も訪問した。右に座っているのがハルトルさん。
■昨年は『国際年』というコンセプトを掲げ、オーストリアにあるエアランゲンの姉妹都市の幼稚園に視察に行ったり、スゥエーデンの幼稚園の先生と相互訪問を行いました。さらに日本の幼稚園にも視察に行かれましたね。いかがでしたか?
『施設内の設備がなかなかいいですね。グループの部屋があって、ピアノがおいてある。それから舞台のついた大きなホールあります。さらに会議室があり、それぞれの先生が自分の机がある。プールもありますね』。

■なるほど。ドイツの場合、小学校でもそうですが、職員室のようなかたちの部屋はありません。一般にミーティングなどに使える大きなテーブルとイスがある『大部屋』のような部屋だけがある。プールもないのが普通ですからね。ほかには印象に残ったことは?
『私たちのところでも、ハンディキャップのある子供を受け入れていますが、日本の幼稚園ではわざわざ付添を担当しているスタッフがいる。これはすばらしいと思いました』

■今後の運営のヒントになったことはありましたか?
『ある幼稚園では写真集をつくっていました。これは面白い。われわれの幼稚園は50周年に向かっているので、それに合わせてフォト・プロジェクトを開始しました』。
『日本の幼稚園の場合、スポーツと音楽のプログラムが毎日のように組み込まれています。私たちのところでもそういう方向でプログラムを考えていきたいですね』。


【取材後記】コンセプトづくりと実行
コンセプトを掲げ、それをスタッフ間で共有していくことは組織運営では大切だ。ハルトルさんの場合、まずは運営母体とほかの先生たちとの情報共有ができている。そのうえで先生たちの強みや興味を引き出しながら、コンセプトを作っているのが特徴。カリスマ的な『指揮者』となるよりも、先生たちを巻き込む『モデレーター(調整役)』になっているかたちだ。同氏のコミュニケーション能力が光る。(高松平藏)

バイエルン州の幼稚園

歴史的には19世紀の工業化と都市化を背景に幼稚園が生まれてくる。この時期、夫が外で働き、妻が専業主婦という初期近代核家族が増えてくるが、幼稚園は共働きをせざるをえない家族のためのもので、いわば福祉分野の施設だった。実際、今も幼稚園の半数以上は教会が運営母体になっている。

一方、連邦制のドイツは州ごとに様々な制度が少しづつことなる。幼稚園については各州、福祉関連の省の管轄になっており、バイエルン州も同様である。ただ法律に関しては教育分野で方針を示している。これが同州の特徴である。

それから幼稚園は教育としての歴史的文脈もある。特に昨今は学力低下問題の影響を受けて早期教育に関する関心が高まっている。そんな中、バイエルン州は2005年に新しい法律をつくる。園児の能力を高め、幼稚園も運営のクオリティを高めるといったことをうたっている。

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発  行  人 : 高松平藏 
発  行  日 : 不定期

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