2006年8月22日
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ドイツのNPO運営体験記
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ドイツでNPOに相当するのがフェライン(Verein)という組織。通常、協会とかクラブと訳されるが、今の日本の状況を鑑みると、NPOと理解したほうがわかりやすい。NPOにも経営感覚が求められるがドイツのNPOはさていかに。
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NPOに相当するフェラインの歴史は長く、18世紀後半から都市部で登場した。歴史については割愛するが、『3人よれば文殊の知恵』ならぬ『(同好の氏)3人寄ればフェライン設立』といったような雰囲気すらある。いずれにせよ、フェラインのないドイツ社会は考えられない。
そんなドイツにあって、今年の春、初めてあるフェラインの設立メンバーになった。が、正直なところ気が進まなかった。この嫌な予感は的中した。コアメンバーの組織運営能力に問題があるのだ。主な問題点は主に2点。戦略立案と情報共有だ。
フェラインの目的ははっきりしているし、スポンサーもそれなりに探し出してくるのだが、戦略化と理論付けが弱い。マネージャーのスキルがいるのだ。設立メンバーの顔ぶれからいえば、そういったスキルをもっていそうな人材はいない。どちらかといえば皆プレーヤーなのである。
実は設立の顔ぶれを見たときに、戦略立案の弱さはある程度予想できた。したがって、この問題は百歩譲るとしても、情報の共有化の問題はなんとかならないものかと、あれこれ働きかけた。
しょっちゅう顔をあわせることもできないので、メールでのやりとりが中心になるが、これまた、CCとかBCCをもっと活用すべきところなのだが、いっこうに情報を共有することの重要性を理解しない。
一度など私はミーティングの前に議題についての資料を前もって送ってもらって、それに対して意見を考えて文章化してミーティングに臨んだ。「すばらしい方法だ」と絶賛してくれた。が、これはミーティングの前に情報を共有化しておくことで話し合いの質を高めるしかるべき方法だ。
もっともメール・リテラシーという点からいえば、ドイツ人は情報の共有がヘタという印象はある。妻が勤務する会社でも、メールでCCやBCCを活用しないために、情報の共有化ができず、業務の効率に影響があるとこぼす。
そもそも『知は力なり』という言葉があるように自分がもつ知識を人にとられてはなるまいという意識が働いているのかもしれない。そのため、情報のシェアを無意識のうちに避けるのかもしれない。
こんな具合で、このフェラインに関わることは私にとって消耗と時間のムダという感覚しか残らない。おまけにドイツ語のメールを早くは読めないので、結局妻に手伝ってもらうことが増える。すると妻にも負担がかかる。もうそろそろメンバーからはずれようかと思っている。
話はかわって、私は大阪のあるNPOの監査役をさせてもらっている。運営のあり方を第三者の視点から見直すことで、NPOの運営の質を高める職務だと理解している。
したがって、監査のときには『これが課題だ』『この部分は問題では?』といったツッコミを入れるわけだが、いやもう、ドイツのフェラインで消耗しきったあとに大阪のNPOを見ると、やけにすばらしく見える。ことコミュニケーション能力に関していえば、雲泥の差だ。
ドイツのフェラインの様子や歴史については、日本のNPOを意識をしながら私もしばしば執筆したり、話したりしてきた。実際、ドイツ社会を鳥瞰すると、都市であっても多様で密度の濃い人間関係をつくり、コミュニティを構成しているのがよくわかる。
が、私のフェライン参加体験は大変であった。私に声をかけてくれた人から副代表になってほしいといわれたが、時間がとれないこと、そして私のドイツ語では大変だからという理由をつけて丁重に断ったのは正解だった。(了)
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